じょうだいさんの映画独白

カイジ ファイナルゲームのじょうだいさんの映画独白のレビュー・感想・評価

カイジ ファイナルゲーム(2020年製作の映画)
3.0
2020年東京オリンピック開催後に日本は完全に終わる。その描写があまりにも極端で、当時言われていた「庶民の感覚」を鵜呑みにしたディストピアにリアリティなど皆無。自分の身から出た錆に後悔しながら戦うテーマを捨て、今回はセカイ系。

破滅寸前の日本、上流階級だけ逃げ切り、貧困層は切り捨てられる。そうはさせるかとカイジが駆り出される。そもそも国債発行の負債1500兆円を国民の財産で相殺するって...。日本を捨てる気満々の奴らが、律儀にゲンナマで返す相手がいるらしい。本筋とは関係ないがご尊顔を拝見したい。世界設定がマジでトンデモ。

1作目はダイジェスト。2作目は脳筋ゴリ押し。3作共通して実写アレンジで女っ気が投入される。これは性差とか女性尊重という現代的解釈でもなんでもない。クドイぐらいの解説&アリアドネ担当。そもそもカイジに女っ気など不要であり、ど底辺の彼らにはそれらを配慮する余裕があるわけがない。LGBTQも人種も障害も無縁の世界。

ただオレが明日生きれるかどうかの狭い視野の中で、自分一人だけでも勝ち抜こうと足掻く集団がカイジだ。この前提条件の中だからこそ、クズどもの土壇場の裏切りや友情に心打つものがある。崖っぷちにあるのは架空の日本だけで、何も感じるものがない。

最悪なのはラスト。

結局カイジは何も得られずなのだが、ファンサービスか何か知らないがビールを飲んで「キンキンに冷えてやがる悪魔的だ」と恒例のセリフ。あのセリフは地下労働の後の禁欲に染みたから出た真の言葉。咄嗟の名言として刺さるのであって、飲食店のジョッキは基本保冷だ。冷えてなければクレームものだ。

しかも2杯目。もはやそのビールに感動などあるはずがない。架空の戦いに勝利し、不義理な仲間に切り捨てられ「あんなに底辺の似合う男はいない」というアラレもない冷酷な言葉でチャンチャン。「自惚れてんじゃねって一体何様のつもりだよ」狡猾に生きる真の敵は取り逃し、追いやられた理不尽な状況に甘んじる。これがカイジなのか?極端な日本の描写から見るものの心を救うような、現実的問題提起もない。

今この瞬間を生きる熱さもなく、目の前にいるのは安定の藤原竜也だけだ。その演技力とのたうち回る様は愉快。それ以外はそれっぽくしただけの悪魔的「麻酔」。