勇気Yuki

音楽の勇気Yukiのレビュー・感想・評価

音楽(2019年製作の映画)
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この映画のテーマは音楽であり、その軸にあるのは“初期衝動”だ。

古武術の3人は「好きなバンドのコピーから始める」や「ライブを目標に頑張る」などはなく、ただただ音を鳴らす。
「せーの」で音を出したときの全能感!朝倉はフロアタムとスネアを叩き、研二、太田はチューニングが合っていないベースを鳴らすだけなのだが、オルタナティブでめちゃくちゃかっこいい。あのキャラクターからは想像もつかない演奏、ガーンとなる。アバンギャルド、ポストパンク、ノイズの要素を含んだ音楽なのだが、古武術の3人はもちろん、そんなことは知らない。生理的な快感を求め、同じことだけを繰り返す。まさに初期衝動である。

不良の古武術と、文化系の古美術、本来なら交わるはずのなかった2組が、互いの演奏を通じてリスペクトしあえる姿は素晴らしい。“音楽”を知ってしまった者だけが、交換できるグルーヴがこの世には確かに存在するのだ。

クライマックスのフェスシーンは、最上級の浮遊感、たぎり。指の運び、乱れる髪、揺れる観客…すべてが生々しく、熱い。

音楽を愛するすべての人へ――
勇気Yuki

勇気Yuki