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私は大丈夫のbikkeのレビュー・感想・評価

私は大丈夫(2018年製作の映画)
3.0
彼氏の夢に付き合い6年間、その挙句に破産、引越しをやむなくされる。新しい家をリノベする、と前向きなポーズで出席した同窓会で出会い、酔って泊めた男に嫌がるところを押し倒され、徹底的に抵抗するでもなく我慢してされるがままになり、妊娠してしまう。しかも男は新しい仕事の上司の義弟だとわかり、職場でも「何かできることは?」と顔を合わせるたびに聞いてくるが、なにができるの?と問い返され黙るしかない。

一方、彼氏はまだ夢を追おうとし、新しい仕事に就こうとする彼女を諦めるのかとなじる。彼女には優しいが、寄り添うことはなく自分が中心。
中絶に付き添いが必要と言われ、仕方なく呼び出した時も、病院で突き放すような小さな笑いをもらすだけで、彼女に寄り添うことなく家を出ると宣言する。

彼女は辛い時に母親と会うが、母は母で聞かれたくないことを詮索しようとし、必要な時には電話が繋がらない。「電話に出て欲しい時になんで出ないのよ」と号泣するそのシーンだけがほぼ唯一、彼女の感情が露になった場面で、それ以外は淡々としたやりとりが綴られた映画だ。

結局、彼女は「私は大丈夫」と嘯きながら、我慢してきたつもりが、実は流されているだけだったと思ったのではないか。自分がしたことだけど、自己責任と切り捨てられるのはあんまりだ…。地下鉄で無賃乗車を巡視員に見つかるが、がんとして認めようとしない、それは、彼女のせめてもの抵抗のように見えた。
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