数年おきに誕生日の前日に観ている映画。
この映画を見ずに歳を重ねるのはもったいない、と素直に言える立派な人生を歩んでいないのが悔しい。
悔しさを思い出したくて、見ている。
語り手が次々と入れ替わる中で主人公がプリズムのように煌めき、いつしか観客もこの物語に立ち会った聞き手として映画の中に引き込まれていく黒澤のイリュージョンが、憎たらしいほど最後に余韻を残す。
私達はたった一瞬の共感者なのか、或いはただ1人の脱落者になるのか。
それは、これから歳を重ねていく自分にかかっているわけだ。
たぶん来年も悔しい気持ちでこの映画を見ることになると思うとゾッとする。
けれど結局人が0を1にするには死か、同じだけの絶望が必要なのかもしれない。