生きるの作品情報・感想・評価

「生きる」に投稿された感想・評価

いつぶりかの再見。
「生きる」ということはなんなのかということに、こんなにもまっすぐ向き合った映画はない。
主人公があの女の子とデートする時、常に何かが二人の間に隔たりとして存在する。
駐車してあるバイクや、料亭の机、狭い道を走る車。
主人公はあの女の子の何に惹かれているのかわからない。とにかく、吸い寄せられるように彼女を追い回す。
そして、あのウサギの人形が飛び跳ねた瞬間に主人公は分かる。
「何かを作らなければいけないんだ俺は!」
そして、主人公と女の子を隔てていた机を飛び越えて女の子に主人公は接近する。
バースデーソングが聞こえる。
その時、初めて彼はこの世に生まれたのだ。
「まだ遅くない。やろうと思えば。」

この映画を再見して気づいたのは「遊び」を、主人公にとっての通過儀礼として描いているということだ。
資本主義社会では金を生み出すことそのものが正義だ。1時間でできる仕事を1日かけてやることが正義だ。時給900円よりも時給1000円が正義だ。絵を描くことよりも書類を書くことが正義だ。女の子と酒を飲むことよりも上司のおっさんにビールを注ぐことが正義だ。
しかし、この映画では主人公は仕事(書類にハンコを押すだけに1日を費やす仕事)で彼は「生きる」ことは何かを考えない。
彼は30年間ずっとしてこなかったこと、パチンコを打ったり、女と踊ったり、酒を飲んだり、女の子と飯を食ったりしている時に「生きる」ことはなんなのかを考えている。
その過程で彼は死に向き合って、この新鮮な生きるという感覚を永遠にするにはどうすれば良いのか考えていたのだと思う。
その結果、あのバースデーソングを聴きながら彼は本当の意味でこの世に生を打ち立てたのだ。

説教臭い映画のように思われがちなこの映画は、実は「働く」ことと「遊ぶ」ことを同列に捉えている。
遊んでいる時の無目的なあの感覚が働くことの自己目的化を考えさせるのだ。
だから、遊んでいる時の主人公の一生懸命な狂気の顔と、公園を造ることに奔走している主人公の狂気の顔が被ってくるのだと思う。

一生懸命に生きた時、人間は自然とああいう顔になる。
瞳孔が開いて口が半開きになって、笑っているのか怒っているのか泣いているのかわからないあの志村喬の表情。
ああいう顔をしてるやつを馬鹿にして吊るし上げるのが現代社会だ。

俺も思わずあんな顔をしてしまうような仕事を見つけたい。
すごい映画を見てる時はもしかしたら俺もあんな顔をしているのかも。
LO

LOの感想・評価

5.0
【】
「初代ゴジラに出てた人」という認識の役者 志村喬(たかし)。

他に観た志村喬の主演映画は「酔いどれ天使」


時代性の演技なのか、黒澤明が優秀賞ゆえなのか、現代の邦画の演技がヒドいのか、私が現代邦画を毛嫌いしてるだけなのか分かりませんが。

確実に言える感想は「演者の演技が自然」

今の邦画って何故か、
「気を付け状態」で話したりして、現実では不自然なものばかりなので、観たくないw
日本の映画は「長編映画」でも、しょせんTVシリーズのソープドラマレベル。
不自然なのはコメディかミュージカルくらいでいいよwと思うくらい。


「ゴジラ」では志村喬が ペンをいじりながら、ボソボソ話すシーンがあったけど、あれでいい。

【内容について】
ガン宣告を(遠回りに)受けた男の話。
役所で淡々と生きてきた男に お告げが来た。

店の奏者に 歌「命短し、恋せよ乙女」を注文した場面は、物語と歌による感情とメッセージ性が強調されてる。

息子の幼少期を フラッシュバックのように思い出す場面も、これまた悲痛。

人間に残せるのは
遺伝だけでなく、遺志(memeミーム)もあると示唆してる作品。

私は若い内に人生謳歌したい(願望)
命短し…

生きるって決めてから生き出した主人公

生きた証として何が残せるか、考えながらみた
Sugi

Sugiの感想・評価

3.9
ラストでも描かれてるように、主人公のように本当の意味で「生きる」ことは難しいよな〜と思いながら観てた。主人公と同じ状況になったとしても、というかそうなったら余計難しいと思う。「命短し」の歌詞が刺さる。

後半は主人公ではなく第三者の視点から話が進んでくのが面白い。
粉雪

粉雪の感想・評価

4.0
志村喬さんの演技が素晴らしい。どちらかといえば地味なストーリーと画面だが、ラストは自然と涙がこみ上げる。生きるって何だろう?タイトル通りの映画です。
おくと

おくとの感想・評価

4.5
志村さんの目の演技が凄かった
顔だけであそこまで表現できるものなのか

後悔のないように生きたい
いみ

いみの感想・評価

4.5

このレビューはネタバレを含みます

本当に素晴らしい作品。

志村さんの名演技たるや…
目の輝きや表情だけで心情がまざまざとわかる
自分のできることを一生懸命やることの意味、心から「生きる」ことの素晴しさがなんの言葉もないが体現している。

ゴンドラの唄を歌いながらブランコをこぐシーン、あまりにも有名で知ってはいたがちゃんと観ることができてよかった。
あの満ち足りた表情!

黒澤さんは本当に天才だ。
私なら小田切とよに通夜に来てもらい語らせるシーンを作るんだけど
それをやるのは野望なことなんだなぁと最後まで見て思った。

ラストの備忘録

通夜最後になって役所のメンバーが熱い思いで渡辺に続け!と一致団結するも
日が開けて仕事場、
日々に戻るとまたいつもの繰り返し
無言で立ちあがり
そうじゃないでしょう!?と訴える木村の熱意もむなしくスルー
木村本人もヒラ社員の自分が何をできまい…と目の前の書類の山に身を埋める

木村、仕事帰りの夕焼け時、渡辺が精魂尽くして作った公園を陸橋から眺める
たくさんの子供たちが元気よく走り回り楽しく遊ぶ姿に目元を緩める木村。

で、終わり。

私は渡辺課長の行動はもちろんだけど小田切とよの行動に感動した。
役所にいると「毎日同じでつまらない」と辞めてウサギのおもちゃを作る工場に転職するのだ。
若さゆえということもあるが働くことに対して無になることはそれこそ空しいこと、とよの行動は私の目にも眩しくうつった。

今回きちんと鑑賞して知ることができて良かった。

なぜ今まで見ないできたんだろう
映画好きなのにちゃんと鑑賞しないできていた。
でも今観たことには意味があった。
不思議な縁を感じた。

もう遅いなんてことはない
とよのように若くはないが、まだ死刑宣告をうけたわけではない
やろうと思えばやれるはず。

私も達成感に包まれながらブランコをこぎたい
そんな最期でありたい。
きちんと生きていきたいと思った。
kk7664

kk7664の感想・評価

4.2
中盤からの場面ごとの背景の動き、音など躍動感、活力が凄い。
後半の通夜の場面も面白い。生きた映画でした。
フルカラーの高画質じゃ表現できない味わい。台詞や間、主人公の表情が絶妙。
三畳

三畳の感想・評価

4.1
冒頭
レントゲン写真とナレーション「この物語の主人公の胃である」。
忙しくて退屈な毎日、無意味な書類にハンを押すだけの課長。あだ名はミイラ。
役所を訪ねた市民、延々と部署をたらい回しにされる。


余命宣告。この時点ではまだ、早とちりかな?と思わせるコメディのような空気がある。でも残念ながら病気は事実。
大切な息子との距離を感じる。


飲み屋で知り合った小説家にはじめての夜遊びを教えてもらう。この辺は時代の貴重な資料になりそ〜と感心して見てた。派手な帽子を買うなど迷走する。

会社の女性部下と偶然会い、判子を貰いに家まで共に帰ったことで、家族に誤解が生じる。


退屈な会社を辞めた元部下に会い続ける。君はどうしてそんなに活き活きしているのか?自分も君のように、何かを作ってみたい、活きて、死にたい。教えてくれ。

わたしコレ(幼児用おもちゃ)作ってから日本中の赤ちゃんと友達になったような気がするの。ただ働いて、食べて、それだけよ。

同じ店内で若いグループが歌うハッピーバースデー、階段を上る若者とすれ違う。
余命宣告をされ、何かに気が付いた主人公にもハッピーバースデーが鳴り響く。


役所でも本気になれば何かを作れるはず。冒頭で相手にしていなかった市民の要望、公園を作ることに向き合い、実現させる。5ヶ月後死亡。

と、終わりと思いきやまだ50分くらい尺が。葬儀では職場のお偉方や同僚が集まって、なぜミイラのような課長が突然公園を作ったのか?回想を交えて話し合う。

ここ蛇足だな〜と感じたけどお役所批判パートとしてはめちゃくちゃ共感できた。自分じゃ何も動かないけど手柄は主張するとか、課ごとに縄張りがあるから勝手に動けないなんて融通きかない体制、ゴミ箱1つ撤去するのにもそのゴミ箱が満杯になるほどの書類が必要。まさに自分のいた元国営の企業と同じ!

そんな中で自分の生きる道を探っても叩かれる、叩かれてもこの主人公には失って困るものがなかったからやり遂げられた。

元部下が飛び込んできて、バシッと全てをぶちまけてくれれば良かったのに、そうはならず、あくまでバカな上司たちと一部の理解者で延々と50分話させて気付かせる。

そして、一応最後には、課長の死を無駄にしないぞ!俺たちもやるぞ!と酒の勢いで盛り上がるけど、翌日になってみれば職場の空気は変わらず。

またたらい回しにしようとした新課長に対して、怒りを露わに立ち上がり睨みつける社員。それでも無言で椅子を自ら直す、深い諦めの表情がMVP演技だった。

同僚の回想の中で、死期も迫り、現場で公園の建設を見守るキラキラした目は間違いなく生きていた!

自分がただの主婦だとして、町の市役所課長が死んで、葬儀でおいおい泣きますかね??それほどまでに人々の心に残る仕事をしたんですね。

最愛の息子とのすれ違いが解消されることがない悲しみも含めて現実。
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