ぴよりん

ソウルフル・ワールドのぴよりんのレビュー・感想・評価

ソウルフル・ワールド(2020年製作の映画)
2.0
映像と音楽は最高、ストーリーはかなり苦手

本作における「きらめき」について、苦手な点を以下に記します。
・様々なアクティビティに挑戦して「きらめき」を探す描写がありますが、どれを「きらめき」と認めるに足るか、という判断を第三者(宇宙側?)に決定されているのが嫌でした。何が好きか、得意かは自分の心で決めたいです。
・「きらめき」は人生の目標ではないし、さらに人生の目標はあってもなくてもよい。また、日常における当たり前こそ素晴らしいから噛み締めよう。というのが最終的なメッセージであれば、「きらめき」の有無をソウルが地上へ行く必要条件とするのはやや矛盾するように思います。これは一体何のためのシステムなのでしょうか。
・そもそも「きらめき」という言葉から、「全ての人はきらめくはず」という決めつけがあるように思います。作中「きらめき」は、得意なことや好きなこと、22番の場合は(恐らく)「生きたいという意思」と描写されていましたが、これらのポジティブな何かを備えていないとソウルが地上へ行けない、というのは息苦しいです。そういったポジティブな何かを得られず、何千年も心をすり減らしていたであろう22番が可哀想です。
・これらはフィクションじゃん、と言われればそれまでですが、作中すべてのソウルに等しく一定のルールが課される点に、死生観・人生観の押し付けがましさ・息苦しさを感じてしまいました。

きっと刺さる人には刺さるストーリーだと思いましたし、一歩間違えると宗教的な解釈違い等の危険をはらむトピックを映像化したのは、尖ってて素敵だと思いました。「きらめき」たいのに、目標を失い苦しんでる人には、「目標なんてなくてもよくて、当たり前の日々こそ素敵だ」と肩の力を抜いてくれる良い映画だと思います。
押し付けが嫌いで全部自分で決めたい人、心が弱って一時的に何も手につかない人には、「きらめき」の押し売りであるこの映画のメッセージは面白くないかもしれません。

映像は肌や水の質感がほぼ実写レベルで美しくて、ネコになった主人公や主人公の体にはいった22番のコミカルな動きが楽しかったです。
音楽は地上パートで流れるジャズが鬼クールでした。
この映像と音楽を映画館で観られないことが惜しいです。