歪み真珠

死刑台のエレベーターの歪み真珠のレビュー・感想・評価

死刑台のエレベーター(1958年製作の映画)
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ジャンヌモローの左眉をキュッとあげる仕草が洒落ていて、鏡の前で真似をしてみたらひょっとこになってしまい三マス戻る。

マイルス・デイビスの音楽から興味を持った映画。やっと!観れました!!
夜の街に響くトランペットの音と茫然と歩くジャンヌ・モロー。「天国と地獄」で胸元に薔薇をさし、サングラスをかけて歩く山崎努と重なった。彼は目的が明確にあったけどジャンヌ・モローは愛する男を探して只管彷徨う。
おフランスったら洒落た映画をつくるのねぇほんとに。

ヒッチコックの「めまい」といい、私はこの1950年代の女性のヘアスタイルと淑女チックなスタイルに弱い。女性がね、手に汗をかくのが恥ずかしいからと手袋をしていた時代。それに加えて、私の顔を見て!といわんばかりのアップヘア。こんな憧れがあるから私が唯一できるヘアアレンジは夜会巻きなのです。真珠のイヤリングも欠かせなくってよ。可愛いファッションや魅力的な女性が出てくる映画はつい、評価が高くなってしまう傾向にある
………書き出すと話が逸れるのでこのあたりで終わります。


てっきりあの小型カメラに入っているのは調査のための資料だと思っていた。それなのにあんなに幸せそうな二人の写真が入っているだなんて。よかった。たとえ長く長く離ればなれだったとしても、この写真がこの世にあると思えばそれを祈りにやっていける。
愛しあう二人は作中では逢うことが叶わなかった。それを思うとジャンヌ・モローが夜道を彷徨うあの映像はより真に迫る。この作品に限っことではないけれど、映画は私の記憶の中で音や映像や台詞が何度か反芻されて、監督や俳優の手を離れて、私だけのものになる。心のなかを出来るだけ好きな人たちや物語、愉しい知識なんかでいっぱいにしたいと大学卒業間近にぼんやりと思う。


引き裂かれて、死ぬぐらいならと薬を飲んで心中をはかるカップルと、不倫を成就させるために邪魔物を殺すカップル。マイルス・デイビスの音楽がいい。それと白黒の画面。下手な痴情のもつれの物語じゃなくて、シャープで粋な作品に仕上がってる。
いくつかおかしなところがあって、車のローキーが外してあるのにあっさりエンジンがかかったり、手持ちの小型カメラで自撮りでもない、二人の抱き合う自然な姿が撮れていたり。でもそんな矛盾はこの際どうだっていいではないか。なんてったってこれは映画だ。しかもそんな些末な。
矛盾はいいとしてもサスペンスのはずなのに出てくる人物がなんともアホっぽいのには困った。なんだあの救いようのないばか二人は。肝が据わってるのか、ただただ危険を感じる力が弱いのかわからないドイツ人の狸も。モーリス・ロネを捜すジャンヌ・モローももう少しうまくやった方が…。
でも好きですよ。音楽はもちろん映像も。

1950年代に憧れ、前髪をふくらませた夜会巻きにするも鏡にはサザエさんが現れた。三マス戻る。それでも私は諦めない、見てろジャンヌ・モロー。