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ホドロフスキーのサイコマジックのdionemishのレビュー・感想・評価

4.2
奇才中の奇才の映画監督、アレハンドロ・ホドロフスキーが自ら考案したセラピー''サイコマジック''を過去のトラウマを拭いきれない生きづらい人々のために施術する様子を追ったホドロフスキー自身が監督した異色のドキュメンタリー。

サイコマジックに決まった型はないようで、患者のトラウマの内容に合わせてホドロフスキーは独自のやり方を提案している。
もうそのサイコマジックのやり方がさすがホドロフスキー、ぶっ飛びすぎ…
色んな患者が施術を受けるのだけど、例えば「家族に自分の話を聞いてもらえない」という男性に提案した方法は「ハロウィン用の各カボチャに父親、母親、姉とそれぞれ対象の家族の写真を貼り付け、それをハンマーでたたき割れ。そしてそのカボチャの破片と家族の写真をそのまま梱包して家族に送りつけろ」や、それまで自意識爆発しすぎていざ自分の人生を振り返った時に自分の薄っぺらさを感じて重度のうつ病を発症した88歳の女性には「これから21日間毎日近くの植物園の樹齢300年の大木に水をあげにいきなさい。自然とひとつになることを感じなさい」などなど、他にも女性に月経の血で自画像を描かせるなど、本当に理解を超える映像の数々で刺激的だが非常に疲れた。

相談してくる患者達が涙をこぼしながら自分の悩みを吐露する映像も、人間らしさが凝縮されていて素晴らしい。誰もバカバカしいと言わずに素直にサイコマジックを受け入れるあたり患者は皆ホドロフスキー信者なのだろうけど…。

ホドロフスキーの教祖感も相まって思わぬところで「信仰」の力強さを知った。
つい宗教に悪いイメージを抱いてしまう日本人の感性だと監督の伝えたかったことは伝わりきらないかもしれない。
それでも確実に新しいイメージを叩きつけられるので面白い面白くないとかではなくシンプルに衝撃を欲してる人にはおすすめしたい。
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