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ソワレのあのレビュー・感想・評価

ソワレ(2020年製作の映画)
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若い男女の逃避行の映画。
人が「今生きることを自分で選んでいる」と気づく事がテーマの一つで、序盤に起こる高齢者施設で延命処置を望まずに息を引き取るお婆さんのシーンがそれを強烈に印象づけていると思う。

これは誰に勧めたらいいか考えながら観ていたけど、いまいち思い浮かばない。自分が安心できる場所・信頼できる人に裏切られ続け、最後は一番寄り添ってくれた人からも距離をとって自分を確立するのが主人公なんだけど、強い人だとは思うが共感できなかった。
芋生悠が演じる山下タカラは、過去のトラウマから自分は傷つく運命にあると受け入れてしまっている。でも事件をきっかけに逃走を図る時、翔太の言葉で新しい自分を探すことを決意したように見えた。

「岬の兄弟」を観たときからある考えなんだけど、映画を観た後は事件のニュースが流れた時に被疑者を糾弾するに傾くのではなく「何か事情があったのか?」と少しは思えるきっかけになる。社会から溢れている人を描く事がそういう契機になるという点でこの映画も高齢者問題、性被害を上手く取り扱っていると思う。

あと映像がとにかく綺麗だった。
干されたシーツが風でふわっと浮くとお婆さんが消えるシーン、ふすまに映る影が踊るシーンなど画で遊んでいるのが最高。
序盤はとんでもないカット数だけどテンポも徐々に心地良くなった。
翔太の孤立の様子を出す時はわざわざパンしていたので、モンタージュの中に人間関係を描くことを目指しているのか?と思った。
あと緑が過去のイメージとして使われていたけど何のモチーフなんだろう。

村上虹郎さんも芋生悠さんもいい役柄だったので、俳優さんのファンは特に観て損ないと思う。
あ