エノモト

アメリカン・ファクトリーのエノモトのレビュー・感想・評価

アメリカン・ファクトリー(2019年製作の映画)
3.8
オハイオの閉鎖したゼネラルモーターズの工場跡地に中国資本が参入し自動車ガラスを生産するフーヤオアメリカ社が誕生しました。
そのフーヤオアメリカに密着したドキュメンタリー作品です。今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞しました。

米国人と中国人が組み、中国人が監督、米国人が実務を行うこの会社は文化交流など良い側面もありますが、あまりにも大きすぎる両国の隔たりによって多くの問題が浮かび上がります。

そんな会社の実情が、米中両国の社員へのインタビューや、労働中の映像、式典や上層部会議の様子などから明らかになります。

両国社員間の、イデオロギーというよりは国民性、仕事に対する姿勢、文化などの大きな隔たりによる連携不足が目立ちます。
アメリカ人と中国人が楽しげに話してると思っても、アメリカ人の渾身のジョークに中国人がキョトンとしていたりして、こっちが笑えてきてしまうくらいの隔たりが存在しました。一緒に仕事をする上で、コミュニケーションと相互理解はやはり1番大切であると実感します。

加えて、
幹部による労働組合の拒否と労働組合を支持する社員への脅しや解雇。
低賃金による経済格差や過剰で悪質な労働環境。
化学物質の川への流出など、環境汚染とそれの隠蔽。
「安全は利益を生まない」として、労働者の安全性や事故等への無配慮。
自動化による大量解雇。
などなど。

中国は一帯一路政策で外国に対する投資を活発化しているので、こういった問題を抱える企業はこれからもますます増えていくのかもしれません。

グローバル資本の難しさを痛感すると同時に、よくこんなところまで撮れたなというような映像がたくさんあって素晴らしいドキュメンタリーだと思いました。
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