やっぱりカルカン

ブラック・レインのやっぱりカルカンのレビュー・感想・評価

ブラック・レイン(1989年製作の映画)
3.4
ちょっと前に録画していたNHK BSプレミアム・ノーカット放送を視聴。
序盤から比較的次の展開が読める節があり少し残念に思っていたが、観ていくうちに予想外の展開を楽しむのではなく定番のカッコよさを突き詰めたタイプの映画だと分かったのでトータルとしては満足だった。

全体的に暗い映像が作品のイメージを決定づけていて、舞台(大阪)の雑然とした感じともマッチしていた。当初は東京での撮影が検討されていたが、スタッフが実際見てみたら思ったより街が近代化されていた事と、撮影許可に関して非協力的だったため大阪での撮影が決まったそうだ。
確かに東京だと、小ざっぱりしていてちょっと合わないような…実際の映像を見ると京橋の商店街や、天王寺などの独特な空気感が作品に色を添えているように思える。

大阪出身としては、高倉健をはじめ大阪の日本人キャストがほとんど東京弁だったのが若干気になったが、面白かったのでそんな事はどうでもいいか。
唯一ニックがニューヨーク市警に帰った後、あの件がどうなったのか気になったけど、高倉健とも話していた通りキッチリけじめをつけたんだろうな、と想像する。原版も渡したし心を入れ替えたという事で。

この映画の公開は1989年10月7日、松田優作は膀胱がんの転移により1989年11月6日(公開期間中)に40歳で亡くなっている。

1989年11月7日付
松田優作さん 膀胱がんで急死
日刊スポーツ
https://www.nikkansports.com/entertainment/yusaku/2009/news/past_news-yusaku03.html
以下抜粋
>>松田さんの闘病の日々は2年前から始まっていた。ぼうこうがんの疑いで除去手術をし、これが成功したものとみられていた。しかし、病魔は日本で数少ない個性派俳優の体をむしばみ続けていた。
 8月中旬ごろから腰痛を訴え始めた。それでも仕事だけは弱音をひとつも吐かずに取り組み続けた。そんな松田さんが仕事をキャンセルしたのは10月5日、最後の映画出演作品となった「ブラック・レイン」のパーティー、完成試写後のあいさつ。あまりにひどい腰痛のためだったが、黒沢社長は「我慢強い男で、相当痛かっただろうに、一度も弱音を吐かなかった」としのぶ。
抜粋終わり

松田優作は佐藤役が決まった後でがんが発覚したらしい。なんでこんな、これからという時にと思っただろう。どれだけの辛い症状に耐えて撮影に挑んでいたのだろう。
そう思いながら見ると、佐藤から鬼気迫るオーラを感じたし「何も怖くない」「命懸けでやり切る」という決心を感じた。
別の記事で、マイケル・ダグラスが松田優作のあまりの殺気に「チャーリー 逃げろ!」というセリフを「アンディ 逃げろ!」と言い間違えたという話を見たが、本当にアンディ・ガルシアが殺されるんじゃないかと錯覚するぐらい演技に磨きがかかっていたという事だ。

ラストはカッコよくて爽やかな終わり方なので、見終わった時にスッキリした気持ちになる映画だった。もし放送されることがあれば是非また見たいと思える作品だ。