くまもん

劇場のくまもんのレビュー・感想・評価

劇場(2020年製作の映画)
3.9
原作既読。

これ、我がことと捉えられなかった人は、主人公のことなんだこのくそ人間としか見れないと思うんだけど、わたしはめちゃくちゃ刺さってしまった。火花より劇場だったな、わたしは。

主人公は、別に自分の才能を過信してるわけでもないし、運がないだけだと悲劇のヒーローを気取ってるわけでもない。好きなことをやりたいって欲望はあって実際好きなことやってるけど、充足感もないし、売れるための努力をしてるわけでもなくて(多分売れたいわけでもない)。

つまりはなりたいものがなんなのかわからないのです。なんだかわからないけど何者かになりたいということなんです。
そして劇団員って多分その沼に一番陥りやすいのね。まあ、劇団員じゃなくても同じだと思うんだけど、文章書くとか映像作るとか音楽やるとか全部そうなんだけど、どこに向かうかが見つかってないから行動したとしてもその努力が正しいかわからないというスパイラルに陥っている。
だから多分ずっとこのまま。なんらかの理由をつけて諦めるまでは。もしくは正しいゴール設定をするまでは。でも9割方なんだかよくわからないまま、将来とかのこと全部なにも考えぬまま進むんだよなあ。

彼女のことも同じで、結婚したいとかこうなりたいというゴールがないからしんどくなる。だってカップルって別れるか結婚するかしかほとんど選択肢ないじゃん。

わたしは作り手だったこともあるし(個人として売れたいわけでもないし才能があると思ったこともない)、彼氏が半年くらいほぼニート状態だったことがあるので、さきちゃんの気持ちも主人公の気持ちも超わかる。で、わからない方がたぶん幸福なんだけど、わかる自分でよかったなと思ってみたりした。
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