魯肉飯

死霊魂の魯肉飯のレビュー・感想・評価

死霊魂(2018年製作の映画)
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『収容病棟』でも垣間見えていた暗いところ。想像を絶する事実が語られていく。長時間ではあるが、全てが不可欠であり切に繋がっている。
スターリン死後、自身の権威に影が差した同じく独裁者の毛沢東。そこで主席が打ち出した「百花斉放百家争鳴」。再三の呼びかけにより、インテリゲンチャの間で批判が次第に強まり過激になっていった。すると、批判発言をした者たちが党を破壊しようと画策する右派に認定され、国民個人を攻撃対象とした「反右派闘争」が一転して始まる。虚偽の告発、誇張された実績、怨恨や数合わせなどにより、条件に当てはまらない大勢の人々が反発分子として右派のレッテルを貼られた。そして、再教育という名目のもと夾辺溝の収容所に送られたのだ。
起こってしまった紛れもない事実。罠を布き不都合なものを爪弾きにする。強国を目指して主義や思想による権力を振りかざし、理想と利益を追求する功利的な姿勢。そこには正当な秩序や統制は存在しない。人を人とも思わない、ただの労働力として全てを奪い搾り取っていく地獄。"革命無罪""造反有理"のスローガンによる「文化大革命」。一連の運動によって、何千万もの人が犠牲になった。国民の意欲や正義を利用し、一方と他方に分断する動き。フロイトの指摘した白日夢のような空想的な道筋。歪んだ英雄感情、一種の貴族主義のような極めて頽唐的な指導。言論の抑制、事実の隠蔽、歴史の抹消はそこに生きた・生きる人たちの存在をなきものにするあまりにも欲深く罪深いことであり、二次被害も甚だしい。
才に欠ける人がのさばり淘汰していく。命を落とした人々と、生き延びた人々の苦しみと魂の叫び。
中国では検閲により上映禁止になる作品が多く、また電影局の許可を受けずに製作したものは一般上映できない。ワンビンはリスクの波及を鑑みて国内会社とは関わりを持たず作品を出している。そんな中で中国史やその実情に迫った映画をつくる勇気と真摯な姿勢。三作品を観て、誠実で優しい印象を勝手に抱いた。
人々の気持ちと過去・現在、そういったものを無理にこじ開けることなく、一切否定せず、過度に脚色せず、ありのままの色で映す。それが歴史とそこに生きた人々の人生に寄り添ったドキュメントを編み出している。時間を経るほど、その惨状は埃をかぶってしまう。色褪せないよう、風化しないよう、忘れられないように後世まで語り継いでいく。
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