コータ

雁の寺のコータのレビュー・感想・評価

雁の寺(1962年製作の映画)
4.5
直木賞を受賞した水上勉の同名小説を、川島雄三×若尾文子コンビで映画化。

主演の若尾文子以上に存在感を放っているのが、三島雅夫と高見国一だ。
生臭坊主を演じた三島雅夫のいやらしい演技!こんなに気持ち悪いおっさんも演じられるんだね。
身寄りもなくもらわれてきた小僧を演じたのは高見国一。鉢の大きな坊主頭と、寂しげな瞳が忘れられない。

禅寺の堕落と腐敗。
住職は密かに愛人を囲っており、法事そっちのけで愛人との情事に耽るなど、堕落しきった暮らしを送っていた。弟子への過度な指導・暴力の描写も強烈。これらは、少年時代に禅寺で修行した水上勉本人の実体験が反映されているとか。

そんな孤独と抑圧の中で、小僧は陰鬱とした感情を募らせていったに違いない。

ここで、三島由紀夫の『金閣寺』、それを映画化した市川崑の『炎上』が思い起こされる。

弟子に課せられた厳しい戒律と、和尚の堕落ぶり。抑圧と支配からの解放。その後、観光名所と化した金閣寺と雁の寺。

衝撃のラストシーンは、『幕末太陽傳』で実現しなかった企てのリベンジだろう。

撮影監督・村井博が果たした役割も見逃せない。斬新な角度からの構図と、白黒明暗のコントラスト。
モノクロ映画に降る雪は実に美しいものだ。
コータ

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