「Show them who we are.」
ティ・チャラ(=チャドウィック・ボーズマン)亡き後のワカンダ。
作品全体が彼へのレクイエム。
MCU作品というよりライアン・クーグラー作品な本作は、ヒーローというよりもその内面性をしっかり描く姿勢を保っていた。
過去の喪失に向き合える者と向き合えない者。
貴重な資源を巡る世界の思惑。
そこに登場する海底王国の存在。
対立と分断と戦争。
それぞれに故郷があり、守るべき民がいる。
ティ・チャラの存在がいかに尊く、強く、大きいものだったかということをひたすら痛感させられ、心が痛んだ。
想像以上にキャラクターたちの成長と、自分自身というヴィランに立ち向かう展開に。
そして、シュリとネイモアは鏡写しのような存在。
本作では、"水"が重要なモチーフとして登場するけど、それは"人"でもあり"涙"でもある。
ワカンダに流れ込み、街を飲み込んだ水はワカンダ人の涙を象徴しているよう。
流され、壊されながらも意思を継承し、また新たなワカンダを建て直す。
彼女たちを柔らかく照らし包み込む太陽そのものにティ・チャラの魂が宿っているように感じ、救われた。
痛みを痛みとして、じっくりと。ただ涙を流し、強く、深く想えばそれでいい。
この残酷で不条理な世界全体を覆う、赦しと再生と希望の物語!
ーーーここからネタバレ含みますーーー
やっぱり最後のシーン。
タロカンに故郷を流され、母を失ったシュリ。
水を制したからこそ、火を燃やし、過去と現実、そして自分自身と向き合えたという対比はグッときた。
上にも少し書きましたが本作で太陽になったティ・チャラ。(あくまで個人的解釈)
そして海底王国に太陽を創ったネイモア。
ブラック・パンサーを受け継いだのはシュリですが、ティ・チャラの意思はネイモアにも強く受け継いで欲しいと思いました。
2人の成長物語だったので、今後も2人で強い王になっていって欲しい!
個人的に、タロカンの文明や世界観が結構好みでホラー的な登場の演出も良かった。
ネイモアにもしっかりと弱点があって、攻略していくのは、シュリの科学者的視点があってのものだから良かったけど、ティ・チャラのようなもう少しフィジカルにウエイトを置いたブラックパンサーが観たい人には物足りなさを感じてしまうのかも。
あと、ロスとヴァルの関係性ってそんなんだったのか笑
海外のアーリーレビューで批判的な意見として「とっ散らかった」とか「まとまりがない」といった意見があったけど、わからなくもない感じでした。
あまりにも扱う要素が多すぎたとは思いますが、リキャストせずに物語を紡ぎ続ける決断をした監督とキャストとスタッフには感謝と拍手を送りたいです。
今後タロカンは世界への扉を開くのか。
ワカンダはどこへ向かっていくのか。
いつまでもついて行くぞー!