おかだ

シン・ウルトラマンのおかだのレビュー・感想・評価

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
3.9
久しぶりのお祭り映画


いよいよ公開された「シン・ウルトラマン」。
往年の特撮ファンから庵野フォワロワーにパンピー映画ファンまでが待ち侘びた、久しぶりの純国産お祭り映画を、ようやく鑑賞してまいりました。

私個人は、ウルトラマンはあまり熱心に追いかけてきたわけではなく、リアルタイムでティガやダイナを見ていたぐらいなのですが、それでも「レディプレイヤー1」や「パシフィックリム」を彷彿とさせる圧倒的な熱量と密度を持ったレビューの数々やお祭り感に、否が応でも期待は高まりまくりです。


早速感想、お祭り映画としての熱量やファンムービー感に圧倒される濃密な120分で最高の体験になりました。

のっけから、カイジュウ(変換が面倒臭い)をテンポ良く紹介・撃破していくダイジェストのエヴァンゲリオン感でしっかりと引き込まれた。いい掴みだ。

さらに終盤まで続くカトクタイ(変換めんどくさい)の膨大なセリフ量を伴ったお仕事シークエンスも、「シンゴジラ」に続いて面白かった。

そして迎えるウルトラマン初登場。
デザインが素晴らしいのと、仰角でのショットもしっかりと押さえた迫力ある戦闘シーン、そしてスペシウム光線の威力。
十分すぎるほどに期待が持てる前半。
まさか自分が30歳近くになって、劇場でウルトラマンを見て興奮する日が来るとは思っていなかったな。

その後も臨場感あるウルトラマンの変身や戦闘シーンの数々と、非常に原点的な人間讃歌を描いたプロットの熱量に、思わずととのってしまう。

団地でメフィラスと話している不気味な感じとかもいいよね。


と、ここまで絶賛してきたが、果たして映画の出来が優れた傑作なのかと問われると、必ずしもそうではない。
というより、多くの瑕疵を持った作品であったとは思う。


まずなにより、位置関係や移動ショットの圧倒的不足による没入感の無さ。
これはいわゆる、エスタブリッシングショットの欠如といったところだが、カイジュウ出現時のカトクタイや重要ポイントなどとの位置関係を映し出す俯瞰のショットがほとんど無いのだ。
付随する移動ショットも大胆に省いてしまうため、例えば序盤で斎藤工が仮設本部から子供を救出に向かうシーンでも、位置関係が非常に分かりづらく混乱してしまう。
その後の、防護服を着たカトクタイの面々がウルトラマン観戦に駆けつけるシーンや、メフィラスの調印シーンなども同様だ。
これらは非常に細かい点だが、しかし重要な瑕疵であると思う。

そして次いで、ディテールの書き込み不足が気になってしまうところ。
もちろん、ウルトラマンのデザイン、カラータイマーや背びれを排したクラシックで流麗なフォルムへのこだわりなどは素晴らしい。のだが、細かい世界観や人物関係の描写が希薄。
斎藤工がウルトラマンに入れ替わる前後の描写、長澤まさみとのバディ関係の醸成過程などを映像で見せきれていたとはいえない。
加えて、異星人来訪後の世界の描写をもう少し細かいタッチで見せてくれても良かったのではと思ってしまう。
それこそ割り勘するメフィラスの支払いシーンまで映してもよかったと思うし、巨大化した長澤まさみを取り巻く世論ももう少し上手い見せ方はあったのではと気になってしまう。

総じて昭和の特撮モノのリブートに対する意欲とフェチズムはビシビシと感じられたのだが、一方で同じ特撮お祭り映画の先輩である「パシフィックリム」でふんだんに見られた映画的フェチズムが欠如していたという点がやや残念であった。


とはいえ、生涯のうちにそう何度も立ち会える訳でもないお祭り映画を劇場でリアルタイムで見られた経験は非常に貴重でした。
細かい文句を散々述べたけれど、そうやってあれやこれやと言ってみたくなるくらいに楽しんで観られました。
あと、米津がいい。とても。

予告で流れていた「シン仮面ライダー」も、非常に印象的なカットが多く、めちゃくちゃ面白そうだったしかつ浜辺美波が抜群に仕上がっている様子だったのでこちらもとても楽しみです。

長くなりましたが、映画館で今観ることに圧倒的な価値があるお祭り映画、最高でした。
おすすめです。
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