おくむらひ

シン・ウルトラマンのおくむらひのレビュー・感想・評価

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
1.4
手前に物をぼかして画面の大半を埋めながら奥に小さく顔を映す構図、魚眼レンズで顔を歪ませながらも真正面にドアップで映す構図など、特撮由来のものかよく分からないがとにかく不自然で奇妙に感じた。特撮ファンなら嬉しいサービスなのかもしれないが、2022年の映画としては特に必然を感じられないし、カットが繋がらない。アニメ的な説明口調と演技のテンションの連続も見ていられない。特に長澤まさみのキャラクターに関しては、叩くお尻をドアップで映されたり、巨大化すればスカートの中を覗かれたり、体臭を嗅がれたときの反応であったり、そのフェティシズムがかなり辛い。一方で、山本耕史演じるメフィラスはとても魅力的で、その周辺に限ってはサスペンスが宿っていた。心理描写はほとんど無いが、ウルトラマンが人間という社会的な生き物の魅力に気づき、協力する様も美しかった。野生の思考の引用でウルトラマンの内面の変化を描いたのだろう。
しかし特攻精神はいただけない。自分を犠牲にして自分より大きく絶望的にどうしようもない何かを退けて皆を護るというのは、かつてのB-29で米軍に突っ込ませた荒唐無稽で理不尽な作戦と重なってしまう。誰かの自己犠牲の下に成り立つ作戦なり平和を、2022年に脚本として用意してしまうのはどんな意図があるのか。大衆を愚かなものとしてしか描かないことと合わせて、この作品が抱えるヒロイズムと社会の描き方の問題はかなり深刻だ。もし第二作があるのなら、その先を期待したい。
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