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おもかげのmatsushiのレビュー・感想・評価

おもかげ(2019年製作の映画)
4.2
10年前、電話越しに何もできず息子を亡くしてしまった主人公、エレナ。現在、エレナはその息子が亡くなったであろうフランスのビーチで働いていた。そこでエレナは息子によく似た少年と仲良くなっていく…

試写会にて鑑賞させていただきました。

元々の短編作品をそのまま本作のオープニングに入れ込むことでエレナ役の女優のリアルな時間経過を感じることができ、作品に奥行きが出ていたように思います。
短編部分での電話シーンは、音だけであるがゆえに息子がどういう状況にいるか我々見る側が想像させられ、かなり長い長回しの演出と相まって、強烈な緊張感を生み出しています。

ストーリーとしては、強弱が少なめの作品であり、観る側に想像の余地を感じさせる作品です。少年ジャンと、エレナの2人の関係は、複雑で、説明しようのない人間ならではの心理の絡み合いがよく表現されています。男女愛とは言えないですが、2人の言動にすごくドキッとしている自分がいました笑 

本作は全編を通して、長回し、被写界深度の深い広角レンズを多用してるのが印象的でした。これにより、映像自体がどこか現実味を帯び、2人の関係を覗き見しているような感覚を感じ、強く惹き込まれました。
また、これらの演出は、鮮やかで美しいロケーションの素晴らしさを全面に映し出すことに成功しており、また同時に広角レンズ特有の歪みによってエレナの心情をより深く感じさせるものになっています。
ジャンとエレナの間にどこか複雑な愛を感じるシーンでスローモーションとボイスオーバーを合わせる演出は個人的にものすごく好みでした。本当にドキッとした。

エレナの心情に深くフォーカスした本作は、天気、カメラワーク、ロケーションを巧みに使い、絶望から希望へと変化するエレナの機微を美しく、そして繊細に表現していました。またその変化する心情を巧みに表現するエレナ役のマルタ・ニエトさんの演技は本当に圧巻です。 

鑑賞して1日だったのですが、なんだかこの作品を思い出すと自然と心が温かくなり、不思議な安心感に包まれます…なんだろうこの感じ…
もう一回見たい…
matsushi

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