やまじん

異端の鳥のやまじんのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
3.4
東欧のどこか。ホロコーストから逃れ静かに暮らす一人の少年がいた。しかし、ある日住んでいた家が全焼してしまい、彼は一人旅をすることに。各地で様々な迫害などを受けながらも必死に生き抜こうと日々もがく姿を描いた物語。

衝撃作というふれがき通りのかなり衝撃的な作品。まず言っておきたいのが、いいシーンが何一つ見当たらない‼全編とおして地獄のようなシーンが展開されていて救いようがないとはまさにこの事なのかと痛感させられてしまう、下手したらうつになってしまいそうな描写の連続…見ていて辛いとはこういうことか!と痛感させられた。

本作では前編モノクロで展開され、台詞という台詞もあまりない印象。さらに、主人公の名前も特にはない。最後にちらっと写る程度にとどまっている。ゆえに話自体はまるで日常のように淡々と進んでいく。そこが恐怖の肝であると感じる。淡々とこの自体が実際に進んでいってるのかと思うと今この場所で日常を過ごせる偉大な気持ちと(フィクションだが)平然として最悪な出来事が隣り合わせで進んでいるのかと思うとある意味この映画はホラーなのか!と思ってしまう。

冒頭のシーンからかなりのおもためシーンでビックリ。モノクロによって多少衝撃を和らげていが、数々の少年への仕打ちのシーンには唾を飲み込むのも忘れてしまうぐらいまじか…と驚愕の連続だった。「ダンサーインザダーク」を思い起こさせるような悲劇的な仕上がりになっている。

劇中では様々な人たちが出てくるが、どいつもこいつもなんだかイヤーな人たちでめっちゃいい人はいないんかと思わず思ってしまった!仮に出ていたとしても、ネガティブイメージがすごすぎてみんな悪人に見えてしまうという謎のフィルターをまとってしまいますが…
特殊な環境かだと人間とはこうなってしまうのかと改めて私達人の思い込みの怖さを思い知らされた。それゆえに、自分たちの無知の危険性をよく感じ取れるそんな映画にもなっているなーと感じた。
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