Tanuki

アフター・ヤンのTanukiのレビュー・感想・評価

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
4.5
色々見落としたうえでのファーストインプレッション、駄文。

人間は欲深くこうしたい/こうなりたいがあるけど、AIロボット(テクノサピエンス)のヤンは時間の経過と付随する経験をありのままに受け入れているところが印象的だった。人間は感情的に物事を捉えるけれど、テクノサピエンスは物事を静的に(適切な言葉が出てこない)捉えているようで、興味深かった。

ただ、もしかするとヤン自身も自分のルーツやテクノサピエンスとしてのアイデンティティについて思索を巡らせていたのかもしれないとも思った。自分の姿が鏡に映る様子を何度も記録していることが、時間の経過/人間やクローンとの違いについて考えていたのかなと思ったり(アイデンティティは他者との比較により生まれる)、そこに感情という派生物はないかもしれないけれど、感情に似た何かがあったのでは?とか考えてみたり。記録ではなく記憶を欲しているようなセリフがあることからも(そして記録と記憶の違いを明確に描写するシーンがあることからも)、彼は無機質に思考し行動する物体ではなく、有機的な感情をもつものなのでは?という推測がいい感じに導き出されて良かった。AIロボット×人間系は良くあるけど、この映画みたいに繊細に美しく描いているのは個人的に初めてみたな。

ニュートラルな服のデザイン、近未来的建築、データ保存、アンビエント音楽etc. 目にも耳にも心にも優しいSF映画だった。
Tanuki

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