Eegik

キミだけにモテたいんだ。のEegikのネタバレレビュー・内容・結末

キミだけにモテたいんだ。(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます


おい!!!!!
愛すべきバカ映画だ~~~とゲラゲラ笑いながら途中まで観てたけど、終わってみればふつーに好きなやつやん!!!マリー最高!!!
実質 true tears/凪あす/空青 といっても過言ではない。。。
ヘテロ幼馴染しか勝たん安心と信頼の岡田磨里。負けイケメンが4人も……

モテメン甲子園本選で、どう考えても身元が特定されてしまう部外者のプライベート失恋映像を全世界に発信された仕返しとして、決勝で大衆(全世界の女子)への告白パフォーマンスをかなぐり捨てて、5人連続でただひとりへの告白をしたのだと捉えてもかなりアツい。Twitter構文みたいな。
「私的な失恋現場を全国放映するな。全国放映の大会決勝パフォーマンスで私的な告白をするぞ」

最後の(元)執事幼馴染イケメンの告白シーンが迫真のカメラ目線で真正面アングルほぼ静止画なのも、明らかに作画リソースの限界なのはわかってるけれども一周回って名演出だと勘違いしたくなったよ……


モテメン甲子園とは、要するに男性版のラブライブみたいなものだと理解しているが、ラブライブに限らず、アイドルアニメで「みんなにキラメキを届けたいんです」的な態度が素朴に称揚されることに違和感/嫌悪感を抱いているので、本作の展開はめちゃくちゃ痛快だった。アイドルアニメへのアンチテーゼってことでしょ?(『虹ヶ咲』1期の例の回で近しいことを扱っているけど、結局「みんなのアイドル」に堕ちちゃうし……)
いくら多くのひとに「モテ」ても、たったひとり、自分が本当に好きなひとにモテなければ意味がない。逆に、本当に好きなひとへ自分の気持ちを伝えられたのなら、ラブライブ優勝なんて、アイドルなんてどうでもいい。今すぐ辞めてやる。
本当はもっと会場の女子たちからブーイングの嵐が巻き起こってほしかったけど、まぁしっかり負けてるしOKでしょう。

スクールアイドル部もとい「モテメン部」は甲子園後も形骸化して残り、彼らが等身大の青春を謳歌する場となるのだと思うと……尊いですねぇ~~。決勝前の夕焼けの砂浜であいつらがいつの間にか海に浸ってた爆笑シーンすらも、本編後のモテメン部の活動の「先取り」だと思うとじんわりした温かみを覚えるよ・・・

ホリコに作中の"モテ"の説得力を認める視聴者はいないに等しいだろうことからもわかるように、基本構成は完全に乙女ゲームのそれに則っている。それなのに、主人公はあくまで「攻略対象」であるはずの男子たちで、彼らの失恋をメインに描くねじれたスタンスの作品ではある。
そのねじれは、他でもないマリー脚本構成に由来するものだと信者のわたしは信ずるわけだが……案外、秋元康の趣味なのか?
(乙女ゲー原作アニメを全然知らないが、むしろこういうのがスタンダードなのかもしれないとは思う)


「フェミニン」なイケメン君のCVは終始不安定すぎて困惑した。フェミニンさを声でも演出しようとしてるのかもしれないが、単に下手くそだとしか受け取れなかった。(調べたら、秋元康プロデュースの男性アイドルユニットからのゲスト声優らしい。なるほ)


で、ホリコはなんで猫娘みたいな格好してるの?

エンディングもふつうにめっちゃ良い曲だった・・・
というか曲の入るタイミングが完璧


そういや冒頭の「連作迷惑メール」の物語パートはタッチ違うし一番アニメーションとしては頑張ってたな。



公式サイトみたら「こんな岡田麿里は見たことない?」という煽りがあったけど、むしろいつもの岡田磨里すぎて安心感を覚えた。乙女ゲーの構図だけどやってることは同じだし、「モテメン甲子園」というトンチキな要素はいつもの恋愛劇のためのフリなので。

思えば、自分がマリー脚本を好きなのは、アイドルものの対極だからなのかもしれない。壮大で公明正大でパブリックな人物たちの物語とは正反対の、しょうもない男女たちの愚かな恋愛群像劇。本作において、そんなマリーのこすり続ける「愛」の物語を、マリー自身が「迷惑メール」と位置付けたのも、とても感慨深い。そうなんだよなぁ……俺らは、どう考えても嘘っぱちの迷惑メールにそれでも引っかかってしまう人間なんだよ……
なるほど。だから、真の意味でホリコは(岡田磨里作品に惹かれてしまう)われわれ自身、つまりマリー自身であり主人公だということか。あ~、乙女ゲームなのってそういうことか!!! 完全に腑に落ちた。

本作は、初監督作品である『さよ朝』のあとくらいのタイミング※のオリジナル作品だし、自身の創作スタンスを直接的にテーマとした、岡田磨里作品のなかでもかなり重要な位置を占めるフィルモグラフィである。そういうことに、いま、なった。

※これは嘘で、『空青』のすぐあとくらい。ただし制作の時系列は異なる可能性がある。
Eegik

Eegik