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Careful(原題)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

Careful(原題)(1992年製作の映画)
3.0
【マーティン・スコセッシ出演予定の山映画】
先日、購入したガイ・マディンDVD-BOX収録の『CAREFUL』を観ました。本作はWiki情報によると、当初マーティン・スコセッシが出演予定だったのだが『ケープ・フィアー』製作の為に降板したとのこと(一応、"Kino Delirium: The Films of Guy Maddin(2000)"がソース)。ガイ・マディンが往年の山映画やケネス・アンガー作品に愛を捧げた作品であり、白黒映画のイメージが強い彼としては珍しいカラー着色が施された作品である。

1800年代の架空の山岳村Tolzbadでは、僅かな感情の揺らぎやくしゃみで雪崩が起こるとされ、人々は慎ましく感情を押し殺して生きていた。その信仰ゆえに、村では、「水に濡れてはいけない」「胡桃の木の近くに座ってはいけない」といった厳しいルールが敷かれている。そんな村に住む執事学校に通うJohannとGrigorssは母親に恋をしてしまう。厳しい戒律に押し殺していたインモラルな感情との鬩ぎ合いを『THE FORBIDDEN ROOM』に通じるサイケデリックな色彩で描く。クリーチャー造形で心理を具現化するクローネンバーグと似たような特徴を持っています。

そして、クローネンバーグと肩を並べられる変態性をガイ・マディンは発揮する。Johannは母親の夢を観るが、不道徳さを戒める為に燃ゆる炭を唇にあて自傷行為に走る。Grigorssは蝋を死体に塗りたくる。これらは、自分の不道徳が村を滅ぼすかもしれないという感情が引き起こしており、抑圧された感情が歪んだ行為を引き起こす心理現象に説得力を持たせている。

ガイ・マディン最大の強みである時代遅れの映画技術を、太鼓昔にはありえない不道徳描写で異次元未来の映画に昇華させる技法がギラついた作品であるが、この時点ではまだまだ技術をコントロールできていない感覚があり、俳優の素人っぽい演技も重なりパワーは今一つでありながらもクローネンバーグに近いぶっ飛んだアイデアと理論的構築に脱帽しました。
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