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MONOS 猿と呼ばれし者たちのおぱんのレビュー・感想・評価

MONOS 猿と呼ばれし者たち(2019年製作の映画)
5.0
ファーストカットから世界の提示がうますぎてその後何の説明がなくても物語に没入できてしまう。親切なのにスタイリッシュ!幻想的な大自然の映像と音圧がすさまじく、大地が息をし脈打つのに合わせて溶け込むように命がある、それを実感する。今もまだ土や風・湿度の感覚が残っている。感覚が研ぎ澄まされた時に見る夢みたいだった。

子供たちが何故そこに居て何のために戦っているのか一度も言及されず、それは本人たちもわからない。物語の終盤に少しだけ出てくる、名前もわからない優しい夫婦のことばかり考えてしまう。

コミュニティの生成から崩壊まで社会の縮図を見ているようだった。本能で生きる者、思考を始めて葛藤する者、それぞれの行動に注目すると面白い。私なら思考を諦めて狂人としてやり過ごすような気がするけど、彼らは知らないふりを決め込めるほど若くはなく、自らを完全に失うにはあまりにも若すぎる。世界が、存在自体が純粋で儚くて脆い。少し触れただけで全て崩れ落ちそう。

価値観の違いは客観的に見るとこんなにも暴力的で救われないものだったっけ?人間というものが何なのかわからなくなった。昔から何もわからないが…