中重優

WAVES/ウェイブスの中重優のレビュー・感想・評価

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
3.8
コロナ自粛が緩和されてから
初めての映画館で鑑賞。
予告を観て"切ない恋愛の物語かなー?"と
勝手に予想していたけど、
その予想は、良い意味で裏切られた。
題名の"WAVES"の通り、
1つの家族に起こる、波乱と再生の波を
表現していたと思う。

ストーリー自体は真新しさは感じないが、
カメラワークや劇中の場面ごとに流れる曲が、
もういろんなことを表していて、
流れている洋楽の歌詞を理解しつつ、
観ていると、よりそのシーンを
深く理解できると思う。
途中で画角が変わって、
まるでインスタのストーリーを
見ているかのような…
どこか非現実的な印象を思わされる演出も
何か意味がある気がした。

前半の主人公タイラーの心情も
わかる部分は多々あった。
父親との確執やプレッシャー、
母親が継母であること、
今までの人生を捧げてきた事からの引退、
そんなときに訪れる彼女との問題。
これだけの事が重なると
逃げたくなる気持ちはわかるし、
自暴自棄になるのも理解できる。

かと言って、した事は最低だし、
他の選択肢を選ぶ事も出来ただろうとも思う。
ただ、これは相手側に問題がないのか?と
言われれば、
そんな描き方はされている訳ではなく、
父親も自己中心的で、
まさに亭主関白というか昭和やそれ以前の
父親って感じで、結構ムカッとした。

彼女もFU○Kいい過ぎ、
感情的になりすぎ、見捨てるの早過ぎ、
切り替え早過ぎって感じ。
もっと話の進め方考えようよというか、
まずは2人の問題であり、
劇中でも大学に行く話が出てるような
年齢なのだから、
思いやりはお互いにないの?と
思うばかりだった。

後半は、タイラー以外の家族の再生を
エミリーを主軸に描かれている。
タイラーの事を前提として、
自らの過ちや、大切なことに気付く。
失敗をして誰かを傷つけたとしても
再生を望んでいるなら
死ぬまで家族は、家族なのだという事が
1つ表現されていた気がした。

ただ、タイラーを放っておき過ぎな気がして、
もう少しタイラーの描写が欲しかったです。
ちょろっとしか出ないので、
彼女のことを忘れられず、
今でも好きなのだなとぐらいしか
伝わってくることはなかった。

映画として、様々な演出があり、
劇中の音楽も最高でした。
できれば音の良い映画館で観てほしいです。
中重優

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