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WAVES/ウェイブスのmaiのレビュー・感想・評価

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
3.6
この映画のどこが惜しいって、重たいテーマに超有名どころの曲を当てたってところだと思います。プレイリストムービーが裏目に出てるような…そんな気がする映画でした。

選曲は抜群にいいし、曲に映画の中で動く心情を語らせるというのは凄く効果的な演出だとは思います。でも、合う合わないがあって、大抵の場合「曲に語らせる」が合うのは青春です。特に、今回のようなクラブミュージック調だったり超がつくほどの有名どころだったり…一般大衆向けの音楽を使うならばなおのこと、軽めのテーマだったり親近感の湧きやすいテーマだったりという映画がハマりやすいんじゃないかなと思います。
しかし、この映画は「感情が抑えられずに取り返しのつかないことをした兄とそれを取り巻く人たち」という構図で本格的なストーリーがスタートします。重たいんです…テーマが音楽に対して圧倒的に重たい。
でも、ストーリーとしては凄くいい題材だとも思います。
殺人を犯してしまった兄であり息子である人間を、それでも自分の家族なのだと受け入れていくという部分や、家族を崩壊させた父親が癌で死にそうなところに会いに行くことで「許し」を経た「自分の中での区切り」を得る部分だったり。
確かに重たいし悲しいシーンの多い映画ではあるけど、さまざまな「別れ」(兄が犯罪者となり終身刑、娘が殺される、父親との離別…理由も事情も様々ですけど)を通してみんながひとりの人として確立されていく様子は、どこか希望を感じるラストでした。悲しいだけじゃない。
だからこそ、そのストーリーを無音で深掘りしていく方がテーマ的にはベタだけど良かったんじゃないかなと個人的に感じてしまいました。映像はすごく綺麗だし、その映像の繊細さとむしろ音楽のない無音・生活音だけで切り取った方が「映画」として語れる部分は多くなったんじゃないかなと。
でも、音楽の良い意味での「軽さ」があるからこそ最後まで観ることが出来る…のかもしれません。
完成度は高いし、ハマる人にはハマるんだと思います。よりしっかりとストーリーとして語らせる映画が好きか、適度にエンタメ的な要素も入れて欲しいか…完全に好みの問題ですね。

取り敢えず予告編詐欺(悪い意味ではないけど、予告編から想像してたのとは大分違いました)です!笑
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