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失くした体のnileのレビュー・感想・評価

失くした体(2019年製作の映画)
4.7
主人公アウフェルの恋の物語と何故かひとりでに動き出す"手"これら2つの物語は同じく時間軸なのか、それとも。。。
「失くした体」というタイトルから勝手にホラー作品かと勘違いしていたため良い意味で期待を裏切られた。

合間に挟まれる主人公の回想シーンが少しずつ暗い雰囲気を帯びてきた頃に彼の人生に光を差す存在となるガブリエルに出会ったアウフェル。そこから大胆にもストーカー紛いの行為でお近づきになるも真実を告げると拒絶されてしまい、そんな時に不慮の事故で手を失ってしまう。アウフェルが失ったものは手だけではなく、人生の意味や愛までをも失い燃え尽きてしまう。
ラストのアウフェルが残した録音をガブリエルが聴き、彼の行動を追体験するシーンは音楽も相まってすごく切ない。だけどガブリエルが見せた優しい表情、アウフェルの雄叫びと決心をつけたような力強さが少しだけ見える表情に救われる。

CGアニメなのか判別が微妙だけど、このなんとも言えない映像の質感が良い。またストーリーもアウフェルの恋路の方は地に足をつけたやけにリアリティのある一方で手の冒険?劇の方はファンタジー色が強い。また切断された手にもかかわらずグロテスクな感じはないし、一生懸命動き回る姿やピアノの音色に耳を傾ける(手しかないのに)姿には人間らしさがあった。
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