みゆ

ロストガールズのみゆのレビュー・感想・評価

ロストガールズ(2020年製作の映画)
4.4
2021.02.03(33)
Netflix・字幕


ノンフィクションの本がベースになっていて、実際に起きた事件が描かれている。

未解決事件の実話というと、なんとなくぼんやりした終わり方になることが多いが、今作では大胆に犯人を特定しているような演出をしていたので、問題にならないのだろうかと驚いた。ここまではっきり描くということは、よっぽどその特定された人物が怪しいと確信があるということの表れだと思う。

そしてとても良かったのは、この事件の背景が、アメリカのある種の社会問題に存在するという事実を浮かび上がらせている点である。病気を持つ子どもがいて、親の愛を欲していても、親は子どもを育てる為に昼も夜も働かねばならず、子どもたちへの細やかなケアまではとても手が回らない。そういった背景が、少なからず売春やそれに絡む犯罪を生み出すきっかけになっているように感じた。

そして警察の怠慢。これも出会い系サイトによる売春が発端であることに起因している。きっとアメリカでは売春婦の失踪は「あまりにもよくあること」なのだろう。警察が捜査をしても、徒労に終わってしまうことが、実際多いのだろうと推測される。だがそれでも警察は捜査せねばならなかった。そういうことを今作は強く訴えていた。

本編の最後に「その後」が文章として流れるのだが、その中に書かれていたある出来事を読み愕然とした。こんな不幸があるだろうか。では自分がその場に置かれた場合、一体何が出来ただろう。恐らく何も出来ないに違いない。そんな無力感ややるせ無さがどっと襲ってきた。
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