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ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男のyyyymmddのレビュー・感想・評価

3.7
権力が及ぼすわたしたちへの影響について。パンフレットのコラムでも書かれているけれど、デュポンの資料をひたすら解読するシーンに現れているように地道な闘いであっただろうこの訴訟を、ここまで心を揺さぶらせるものにしたのはすごいことだと思う。資本主義の恐ろしさを映画の力でもって暴き出すこの作品の力に感動した。

自分もかつては大手メーカーに勤めていたこと、いまも化学薬品を扱う仕事であることから、自らの加害性について考えないわけにはいかなかった。普段も頭の後ろで考えていることではあるけれど、それでもこの映画を観ている間は自分の行動について改めて考えた。ものを作る仕事をしている多くの人が自らに問うべきことなのかもしれない。



この映画に、そしてこの訴訟の経緯について疑問を感じるただひとつのポイントは、PFOAとテフロン(をはじめとするフッ素樹脂)を混ぜこぜにしてしまうことだ。家中のフッ素加工を危険だからとひっくり返すシーンがあるが、それについてあとで補足されることはない。
デュポンのPFOAによる公害、そしてそれを否定し続けてきたことは許されないことだ。けれど「PFOA=テフロン」ではないし、フッ素樹脂そのものは仮に飲み込んだからといって即座に体に取り込まれるものでもない。それに様々な場所に存在しているだろうフッ素樹脂に触れずに生きていくことはかなり難しい。PFOAダメ!絶対!かもしれないが、テフロンダメ!絶対!ではないのだ。

エナジードリンクを毎日何本も飲み続けることや、大音量のイヤホンで音楽を聴き続けることはテフロン加工のフライパンを正常に使うことより何百倍も体に害を及ぼすはずだ。テフロン加工のフライパンにひとつも有害性がないとは言わないが、たとえば毎日タバコを何本も吸う人がテフロンの有害性を謳うなら、耳を貸す必要はないだろう。

これはフッ素加工だけでなく、あらゆるテクノロジーとどう向き合っていくかということだ(COVID-19のワクチンだってそう)。そのテクノロジーを使うことのメリットとデメリットは?副作用はどれくらいあって、そのリスクを取ってでも使うべきか?どう使えば危険で、どう使えば安全か?ひたすら考え続けること。おそらく絶対的な正解というのは、ない。政府の、企業の、もしくは声が大きい人間の、わかりやすい説明に安心しきらず(できればなるべく正しい科学の知識を使って)自分の頭で考え、選択していくことが大事なのだと思う。
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