雄大な川を固定カメラで捉えた画面に、船体下部のサーモンピンクが鮮やかな大型船が左からゆっくりと入ってくる。オーディエンスへ作品の向き合い方を提示する意味で、冒頭のワンカットはあまりに完璧で美しかった。
全体的に抑制された暗い画面の中で映し出される豊かなカットの数々、自然の機微まで捉えたかのような音響、そしてウィリアム・タイラーのナイロンギターが組み合わさり、何回でも味わいたくなる作品になっていた。
キング・ルーの家に初めて招かれたクッキーが、「くつろいでね」といいながら外で薪を割り始めたキング・ルーを見て、おもむろにほうきを手にして掃除を始めるシーン（窓枠越しにキング・ルーを捉えるカットが最高）が、これから二人の間に築かれる関係のすべてを表していたような気がした。
