雪中梅

雨月物語の雪中梅のレビュー・感想・評価

雨月物語(1953年製作の映画)
4.6
物質文明の否定。
陶器にせよ槍にしろ、金、力、そして名誉に陶酔する男たちの惨たらしい戦争と略奪。物質に取り憑かれ、蕩尽し、己の道を見失ってゆく。
その対極の存在としての虐げられる女たち。
愛と生、人間精神の尊さが、白黒のフィルムに燦然と輝き出す。

物質で愛を担保しようとする主人公は「市民ケーン」に近い。

なお、鑑賞にあたって上田秋成とモーパッサンを読み直した。
浅茅が宿とか吉備津の釜とか、じっとりとした文体で描かれる執念、愛憎、怪奇。そして、人間の絶望も強欲も悲観的に嘲笑し、悲喜劇に落とし込むフランス自然主義の妙。
溝口の天才的な演出とカメラワーク、役者陣による人間精神の真に迫った演技によってこれらは完全に調和し、類稀な作品が作り上げられている。

長回しというリアリズム。
切腹が岩陰で映らない演出が個人的に好き。
雪中梅

雪中梅