雨月物語の作品情報・感想・評価

「雨月物語」に投稿された感想・評価

sonozy

sonozyの感想・評価

4.5
1953年、溝口健二監督。宮川一夫撮影監督。
ヴェネツィア国際映画祭 銀獅子賞
Eテレでやっていた「キャメラマンMIYAGAWAの奇跡」を見て、初見です。

近江の国 琵琶湖北岸の村に暮らす貧農の源十郎と妻 宮木と幼子。
義弟 藤兵衛と妻 阿浜。

羽柴秀吉の軍勢が村にも迫り、野蛮な兵士に家や女性が襲われる状況の中、源十郎が作る焼物を皆で手伝い、賑わう長浜へ売りに出るが、途中船で進む中、危険と判断し宮木と幼子は家に戻る。

焼物は飛ぶように売れ、藤兵衛はその稼ぎの分け前をもらうと、侍の家来になるため妻を残したまま姿を消してしまう。

源十郎は、焼物を買いに現れた、老婆を付き人に従えた若狭という女(京マチ子)の屋敷へ焼物を届けに向かう。
座敷へ上げられた源十郎は、若狭と老婆の引き止めと若狭の魅惑で、愛する妻や子の事も忘れ、この家に居ついてしまうが・・・

溝口監督は宮川氏に映像設計はすべて任せていたという事ですが、まさに水墨画のような霧の中を進む船のシーン、水辺での美しいシーン、屋敷での陰影の妙。

今年4月には、NYでMOMAとジャパンソサエティなど3箇所で宮川一夫撮影監督作27作の特集上映が開催されたそう。
通常版で見ましたが、マーティンスコセッシ主導による4Kデジタル復元版も見てみたい。
ゆき

ゆきの感想・評価

4.0
「雨月物語」のなかでは個人的には『吉備津の釜』が一番好きなのだけど、今回のなら『浅茅が宿』が好き。
横暴だったり、小心者の癖に大風呂敷を広げたがる男に翻弄される女。
お話から想像する女はまさに京マチ子さんだったんだろうか。
私には、「雨月物語」の女達は総じて足が無いようなイメージなのだけど、今回観ていてちゃんと地に足がついてるのにやっぱり足元に靄がかかったような。
お話はエグく現実的なのに、そんな幻想さがたまらないのです。
原作の怪異小説の9つの短編から「浅茅が宿」と「蛇性の婬」2つをもとにアレンジしたもの。焼き物をつくる二組の兄弟夫婦の明暗を分けるものの正体は―。浦島太郎的なお伽噺のようでもあり、芝浜みたいな夢とうつつと幻を描いた落語的な人生訓でもあり。二組の妻と京マチ子演じる魔性のお姫様を合わせた3人から、女性の強さ・妖しさ・逞しさ・儚さなど色んな情感が読み取れる。溝口作品はいつも、悲劇の描き方が胸に迫るものがある。霧の立ち込める河を舟で渡るシーンは様々な意味合いがあって示唆的。兄弟がそれぞれの妻と再会するシーンはどちらも「うわぁ‥」て声が出た。
書庫番

書庫番の感想・評価

3.5
2018年11月18日 レンタルDVDにて鑑賞。

上田秋成の読本『雨月物語』を川口松太郎と依田義賢が脚色し、溝口健二がメガホンを取った作品。
第13回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞。
戦国時代を舞台に己の野心と欲望に溺れる二人の男を主軸に据え、幽玄な妖異譚と生々しい戦乱の話を交えて、人間の愚かさと弱さを描く。

男の身勝手さと戦乱の世に翻弄される二人の女達が不憫で堪らず、心が鬱々して行く。
ラストに流れる田中絹代のモノローグまで物悲しい。
XTC

XTCの感想・評価

5.0
2018.11.18
名作。戦乱の世に振り回される百姓兼工芸家の夫婦の物語。野心、欲望、情愛が生み出す幻想。「これが世の中というものなんでしょうねぇ」。
長回しをするということ。

“世界のミゾグチ”の真骨頂。
アートなのに話しがわかりやすい。

最近の『カメラを止めるな!』とか『バードマン あるいは〜』とか大胆に長回しを使った作品もそれはそれで面白かったけど、溝口監督が長回しをすることで狙ってる効果には、各シーンを伝えていくための本来的な意図があって、もっと興味が深い。

時間と空間が途切れないということ。

怪談話なので主人公は多くの幻想を見ているけど、それを一つの空間の中で描写することによって、これを観てる側にはそれが現実なのか幻想なのかがわかるようになってる。これを複数にカットして繋いでしまってたら、何が何だかわからなくなってたと思う。一連の流れの中で物事が展開していくので、繋がりや関係性を感じ取りやすい。
それと、緊張感がある。女幽霊が出てくる話しなので、ただでさえおどろおどろしいところ。ビックリさせる目的なら、カットしていきなりアップとかにすればいいけど、これはホラーじゃない。無言の間合いの中で淡々と流れ続けるシーンの時間と、それを観ているこちら側の実際の時間とが等しくなるから、その張り詰めた空気感をより現実的に共有させられる。

テーマについて。
出世や金儲けなどの人間の欲は醜いもので、それによって家族や家庭生活などの大切なものが失われてしまう、というようなことを言ってる。が、そんなにきっぱりなのかどうか。戦争が終わって高度経済成長に向かっていた時代背景を想像して考えてみると、貧しい人がお金持ちになりたいというピュアな気持ちを完全否定したいわけではなくて、大切なものを失わない程度に豊かさを追い求めていきましょうね、というエールを送りたかったのではという気がした。

何事も適度に、適当に。
だから長回しのやりすぎも程々に。
いしが

いしがの感想・評価

3.5
ほぼ全てのショットでカメラが動いていて、それによってじわじわと視界が開けていく感じが堪らない。
1ショット1ショットが一つの作品のように思える徹底ぶり。
『羅生門』のような考察的作品かと思ったら意外とシンプルなものに近かった。でも、脚本から撮影まで登場人物の姿に心迫るものがあり、常に興味深かった。
幻想や夢と日常の交差は少し古くスタンダードな演出ではあったが、演技が素晴らしいため恐怖を感じる。
char1

char1の感想・評価

5.0
 邦画を代表する、完璧に近い映画。
 カメラワーク、演出、演技、全て非の打ち所がなく、いつ、誰が見ても面白いと思えるのではないか、と思えるくらいの国宝級の傑作。白黒だから、古いからと敬遠するのは勿体無い。映像表現の極限を突き詰めた、怪奇物語。
 もっと色んな人が見るべき作品。特に日本人に見てほしい。日本は昔こんなすごい映画を作れたんだぞ!と、知ってほしい。こういった作品に関しては、むしろ海外のほうが知っている人が多いようで、少し残念でもある。DVD、BDのパッケージがもうちょっとかっこよければなあ・・・。クライテリオンのはかっこいいのに。山椒太夫のパッケージなんてポスターにしたいレベル。
 映画本編の感想とは少しかけ離れてしまったが、一読された方は是非ご覧になってほしい。「きっと後悔はしない」と胸を張って言える、数少ない作品の一つだから。
Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

5.0
‪「雨月物語」‬
‪黒澤の羅生門が金獅子賞に輝き、それに対抗し製作された溝口の傑作もはや日本映画の“極上”傑作とも言える本作は欧米、西洋の人間に多大なる影響を与えた芸術で本作のホラーファンタジー的な演出は凄く、繰り返し観たくなる。そして宮川一夫は日本が誇るカメラマンだ。本当に大好きな映画だ‬。
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