TomoyaKishigaki

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編のTomoyaKishigakiのレビュー・感想・評価

4.5
映画として傑作。
まず、テレビシリーズの振り返りがほぼ皆無なのがよい。本作単体で十分に感情とストーリーを起結させることができる自信の現れととれる。原作的にもおそらくここは劇場版としてクロップしやすかったのではないか。余計な序章がないかつ作品の構成がめちゃくちゃシンプルなので一見これテレビシリーズか原作見てないと面白くないやろと感じてしまうが人の話をきいてるとそうではないらしくその仮説としては圧倒的かつ緻密そしてチャレンジングなアニメーションによる繊細な心理描写の工夫による部分が大きいと思う。基本的にカットあたりの動きが多めで違和感あるセリフカットとか単一な動きのみとかがほぼなく視覚効果による伝達が恒常的で飽き難い。(この点についてはテレビアニメシリーズも同じ)
戦闘シーンの爆発的に勢い、臨場感溢れる描写は圧巻だし、回想シーン等の繊細な心理描写と感情移入させることが求められるシーンでは丁寧に表情やセリフを選び工夫して人情味をこれでもかと感じさせる描写を追求する。とにかくキャラクターの表情や動きなど各所の作画が力強く生命的な伊吹がより一層感じられ豪勢なアニメーションも相まって痺れる展開や胸を打つシーンを見事に作り上げていた。映画版に限ったことではないが、声優陣が第一線で活躍する専業の声優で固められていたこともキャラクターの生命力をより強固にした一因と言えよう。そしてそれによって玄人の興味も離さなかったのだろう。
あとは、語りでそこ炭治郎が主役であることを認識させつつも、本作の主人公が煉獄であることを明確に物語る構成にはなっていてまさにその煉獄のワンエピソードで起結されている。炭治郎と煉獄のやり取りでほぼ構成されていて、ほかのキャラクターやエピソード、ちょっとした差し込みカットは、既存の原作・アニメファンを楽しませるために最低限、主軸を邪魔しない形で組み込まれたオマケのようなものに留まっていたイメージ。
だからこその痺れる展開が生まれたし、圧倒的に感情移入感動できて、さらには本作の主役の存在感そして儚さをひしひしと感じることができたというか打ちひしがれさえした。
ここまでシンプルに情に訴えかけ、胸を熱くすることができているのは単なるブームによるものではなく、それの追求による賜物であり、本作は歴代最高興収を塗り替えるに相応しい大傑作といえよう。
TomoyaKishigaki

TomoyaKishigaki