だいき

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編のだいきのレビュー・感想・評価

3.3
2020年公開映画124本目。

映画館を支える"柱"となった。

2021年日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞受賞作品。
2020年の年間興行収入世界第1位を記録し、2001年公開映画『千と千尋の神隠し』という絶対的王者を塗り替え、現在日本歴代興行収入第1位となった。
内容としては、2019年4月から9月に放送されたテレビアニメ「鬼滅の刃 竈門炭治郎 立志編」の続編として、原作漫画の第7巻及び第8巻に収録されている無限列車での戦いが描かれる。
昨年は鬼滅ブームと呼ばれるほどの大盛況を収めたが、原作漫画自体は2016年から週刊少年ジャンプで掲載されていた。
当初、そこまでの話題にはならず、むしろ打ち切りになりそうな噂もあったらしいが、アニメが開始された途端、人気急上昇。
作者も「鬼滅の刃」がここまで有名になるとは思っていなかっただろう。

映画という2時間の中で、完全な小宇宙を形成するのが映画の目指すべき理想だと見るなら、明らかに本作はその理想像から外れている。
なぜならば、TVアニメから続く一連の流れの継承を担わされたからであり、更には年内に放送予定のTVアニメ第2クール"遊郭編"に向かう「繋ぎ」の役目を求められたからである。
既に漫画が完結していることもあり、中途半端にスピンオフ作品を作るより、第2部のスタートとして映画を公開した方が、間違いなく集客に繋がると製作者側が考えたのも分かる。
つまりは、商業的要請が映画としての独立性、完成度を落すという映画界の悪癖に見事にハマった形でこのアニメは作られていた。

過去の少年漫画「ヒーローもの」と比較して見ると、本作と違うところは、戦いに向かう主人公たちの消極性。
主人公炭治郎は妹を守るために仕方なく戦い、善逸は戦いの場に置いて終始狼狽し続ける。
戦いにより自らの能力を高め、さらなる強さを求める行動を善とするのが基本的ヒーロー物語だとすれば、本作は戦わざるを得ないシュチエーションに、恐怖と怖れを抱きつつ向き合わざるを得ないというマイナスのベクトルを主要キャラクターが持っている。
その「戦いへの消極性と怖れ」こそが、他のヒーロー物語と一線を画す特徴だと考える。
コロナ禍の中、世界の歴史的記録を塗り替えたことは日本人として誇らしいことであり、苦境が続いた映画館にとっても救世主となっただろう。
今度はコロナという鬼舞辻無惨より強い鬼を退治してください。
だいき

だいき