mai

ジャッリカットゥ 牛の怒りのmaiのレビュー・感想・評価

4.0
いや、これは凄い、凄すぎる。
凄すぎて、買う気ゼロだった公式ガイドブックを衝動買いしてしまいました…。笑

まず、映像表現の巧みさ。
舞台となる村や森の自然豊かさな様はもちろん、そこに住む人々の暮らしがそのまま映されてるようで、すぐにその場にワープした気持ちになりました。
次にカメラワークの巧みさ。
去年まで見てたアジアフォーカスの作品でも、ここまで映像をどう映しとって見せるかにこだわり抜いた作品はなかったような気がします。ドローン然り、手振れの少ない映像然り。何から何まで、完成度が高すぎます。
そこに美しく豊かな自然。
もう日本では絶対観れないし、こんなに迫力のある映像なかなか作り出せないと思います。

あくまでも第三者の傍観者としてのカメラなのに、いつの間にか入り込んでいるんです。そして、その映像が人間目線に変わったり、水牛目線に変わったり…それがまた更にいい!

最後まで見ればわかりますが、村人特に女性や老人たちは静観しているのが何とも言えないですね。
この水牛騒動に熱を上げるのは男性たちなんです。その姿はまさに獣です。
獣を追っていたはずで、村を守るんだと正義心があったはずなのに…いつの間にか水牛騒動にかこつけて自分の欲がどんどんと滲み出てくるようになります。その、獣よりも獣な様がこの映画の真骨頂の部分だと思いました。
さらに、ラストもラストのシーンで水牛が神秘的な森を背景にこちらをじっと見つめているんです。獣に静観されることほど、真に迫る静かででも迫力のあるシーンはないのかもしれません。自分たちよりも下等であると、捕食の対象である獣が変化するんです。
むしろ、その獣に自分たちがいかに人間然としていて実のところはどこまでも獣の一種であるかを気付かされます。
虚しさというよりも、生々しさという方が正しいかもしれません。

この映画は本当に凄かった(語彙力喪失してしまいます。笑)。
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