ふつかよいのタカハッピー

すばらしき世界のふつかよいのタカハッピーのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
5.0
「あなたのためを思って言っている」の「あなたのため」に妙な煩わしさを感じたこと、頭では「こうしなければいけない」とわかっているのに動き出せず、唇を噛み締めたこと。誰しも少なからず経験があるのではないだろうか。

だからこそ、言葉を選ばずに言うと、すべてにおいて真っ直ぐすぎるくらい真っ直ぐに生きている三上正夫が羨ましくもなった。世間一般に「正しくない」と判断される行動をとれば、つまはじきにされるような社会の中で。

一見、何ひとつ変わらないように思える今日は、他者との関わりで少しずつ色を変え、明日へとつながっていく。
「普通」の世界に戻ることを決した三上が最後に見た空は、どんな色だっただろうか。

針の穴へ通した糸がいとも簡単にするりと抜けてしまうように、一歩間違えば誰しも危うい場所に立たされるような世界の中で、自身が生きる意味を見直すきっかけとなる作品だった。