たまちゃん

すばらしき世界のたまちゃんのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
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何もかけないまま何日も経ってしまいました。
思うことはたくさんあるのに。

殺人を犯して服役し出所してきた男、三上の物語。
役所広司さんが素晴らしいです。
真っ直ぐに感情のままにしか生きられない男。
普通に話していても、だんだん激昂して相手の話を聞かず自分の言い分を一方的に怒鳴る散らす。
母親の手がかりがあるかも?と自分が子供の頃にいた施設に津ノ田と訪ねた時。もしかしたらお母さんが中にいるのか?部屋の前で立ち止まった時の横顔の表情。

彼が出所してきてから振るった暴力は、絡まれたサラリーマンを助けるためだったり、夜中に近所迷惑で大騒ぎをする奴らだったり、正当性が認められそうなものばかり。
見て見ぬふりをせず彼は助けるし、注意をする。

仕事が見つかり、みんなでお祝いをする。とても良い場面だった。「みんな我慢している」「何か言われても流して聞かないようにする」みんな口々に助言をする。
その結果がイジメを見て見ぬ振りをし、仲間の嘲笑を同調し笑う。そしてコスモスを抱えての哀しい結末。

彼の暴力性と子供の頃に親に捨てられた哀しい過去とを結びつけ考えさせる辺りもとても良いと思いました。
仲野太賀がお風呂で三上の背中を流してあげる時と、仕事のお祝いの会で皆んなが口々に助言をする時に黙って下を向いてかすかに微笑んでいた表情がとても好き。

彼も長澤まさみに怒鳴られ、三上と付き合ううちに物事を真正面から捉えられる人になっていった。

色々良すぎてメチャクチャになってしまいました。「ゆれる」や「永い言い訳」が大好きですが、本作もずっと心に残る一本になりました。
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