ちぃ

すばらしき世界のちぃのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.4
普通に途中から嘔気抑えるのに必死すぎた。皆これ普通に観れるの凄いなと思う。

最初の時計の針を合わせるシーン。長い刑期の中で錆びてしまい使えなくなった時計。高かった買い物なのにすぐに捨ててくださいという三上。三上の気の短い様子と同時にポンッと投げ捨てた時計のように三上自身も社会に戻されるのが序盤なのに不安すぎて辛かった。

救われたと思ったら落ちていく。常に危うい所にいるけど、周りで手を差し伸べてくれる人達がいて、どっちの世界にもそういう人達がいたのは三上の実直さ、素直さからなんだけど、同じ言葉でも受け取り手の経験や状況、教育、環境によっては伝わり方が変わるんだなって思う。それは逆も然りで、救済側だと思ってた人達が三上に気付かされた事があるんだよな。介護施設のシーン、命を預かっている立場としてやっぱり職員の言ってる事も最もなんだけど、利用者と職員間での関係や言動の違い。チグハグに見えて当たり前にあるからこそ三上視点で観てる私には辛すぎた。私は馬鹿でかくアピールしてくる花は花言葉を調べたがる気持ち悪い視聴者なので大雑把な花言葉が「調和」と「謙虚」で泣いてしまった。でも最後の花とシワシワの手が余りにも絵になりすぎて見てくれ!!!!という気持ちを強く感じすぎてうるせぇよと思ってしまう傲慢さ持ち合わせてるのでこの映画観るの辛い。

三上が時折子どもみたいに笑う。三上の母の行方探しからまず話が出るんだけど、やっぱり視点が三上と母に対してだからエキストラというか背景に映るのも母子ばっかり。両親と子とか父と子は全然ない。視点が絞られて観やすかった。三上が風俗で母として子を迎えに行く嬢に出会い、話を聞いて安堵した表情を見た時、これが例え偽善者としてでも少しでも救いになってくれればと思った。三上がいつどのタイミングでもいいから、鉄格子の外の世界を空が広いと思ってくれてたらいいのにな。

とにかくめちゃくちゃ長くなっちゃったけど、津野田が、というか太賀が本当に良かった。
ちぃ

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