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花束みたいな恋をしたのc5のレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.8
◯舞台挨拶生中継付き。数百本に一本の、自分にとって特別な、花束みたいな映画になりました。今、「クロノスタシス」聴きながら書いてます。

◯坂元裕二脚本作品。監督や主演陣ではなく「脚本家」で話題を集める作家が今どれほどいるだろう。ですます調の台詞回しが今回も効いてます。それにいつも通り「生きづらさ」を感じる人への応援にもなっている。ご本人のお言葉を使えば、「-5元気な人が-3元気になる」ように。

◯作風を知っていれば展開はある程度予測はつくが、それでも開始数十秒で「あぁ〜こういう話か〜」ってなった時点でもう大好きになっていた。凄まじく趣味の合った2人の5年間を描く。坂元さんは架空の日記を5年分書いてから執筆に当たったそう。

◯小説、音楽、映画、漫画、ゲーム、舞台、美術、写真、あらゆるサブカルに精通した2人。『ショーシャンク』はマニアックじゃないし、ワンオクは「聴ける」もの、「キセキ」や「RPG」をカラオケで歌う人たちとは打ち解けられない。坂元さんのチョイスが絶妙だ。もちろん自分はすべてわかったわけではないが、それぞれ精通している人とっては「ああーそこ突くかー」となるものなのだろう。自分はユーロスペースで『希望のかなた』を見た時の2人の反応の違いを見た時には震えました。あと『クーリンチェ』ね。

◯物語と前半と後半でシンメトリーのようにエピソードが呼応している。例えばじゃんけん、ファミレス、ストリートビュー、最悪最低の時に思うこと。でも後半で出てくる時は意味合いが少し変わって。ブラジルのサッカーの話も、前向きなニュアンスが加わる。

◯2人は信じられないほど趣味があったようだが、運命の2人ではなかった、ように思う。価値観や考え方はどうだったのだろうか。お金や仕事、結婚観。食べ物だってそうかもしれない。ラーメンブログを書くほどのラーメン好きの絹と、麦がラーメンを食べるシーンはない。だからこそオダギリジョーが絹をラーメンに誘った時、絹はああも顔を綻ばせたのではないだろうか。それでも2人が恋愛関係にあったのは紛うことなきことだし、幸せな時間を過ごしたのだろう。うん。ハッピーエンドだよ、この映画。

◯ファミレスのシーンは至高。「スマホの解約みたい」に思い留められてしまう麦と絹に対し、キラキラした、5年前の自分らのような若い男女が映えて見える。2人はくすんで見える。

◯今、麦と絹が何をしているか、何を考えているか、知りたいな。元気でやれているといいな。

◯菅田将暉は言うに及ばず。有村架純もすごくよかった。どんどん「映画女優」となってほしい。その他、オダギリジョー、韓英恵、萩原みのり、宇野祥平、佐藤玲、池田良(敬称略)と自分の好きな役者陣がたくさん出ていて嬉しかった。

◯プログラムがとても豪華で丁寧、愛に溢れている。貴重な坂元裕二インタビューもあるし、三浦しをん、佐久間さんのレビューや対談も載っている。カルチャーの紹介も載っています。購入お薦めです。

◯自分は、麦と絹と同じ歳だったことに気づく。ああーあの観覧車乗ったなーとか思いながら、色んなことを思い出してしまった。
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