あんこそうめん

花束みたいな恋をしたのあんこそうめんのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.1
2015年から2020年のリアルな時の流れと時代の価値観を反映して詰め込んで、優しいフィルターをのせたような、
“今”の二人の恋愛映画。

主人公たちの人物像にリアリティがあって、たまらない生活感だった。調布っていう場所も絶妙。小説、音楽、漫画、ゲーム、会話の端々に出てくる言葉の全てが絶妙で、懐かしさとわかりみで悶えた…

特別なことは何もない、そこにいそうなふたりのありがちな恋愛なのだけれど、まるで本当に彼らがそこに生きているかのように丁寧に描かれていて、一緒に5年間を過ごしたような気持ちになった。
役者さんたちの演技が上手過ぎる…。

以下ネタバレです。


ふたりの気持ちがよくわかるし、
わかるからこそどうしようもなくて、泣きそうになった。
ふたりともきっと夢見ていたのは“現状維持”だったのに、そのために描いた道のりが違ったんだろう。
言葉にしなくても伝わりそうなくらいなにもかも“同じ”だったのに、あえて言葉にしなかったから、確かめなかったから、小さなズレが少しずつ積み重なって、どうしようもなく埋められなくなっていってしまったんだろう。

もしふたりが働いてから出会っていたら、もう少し違ったのかもしれない。
社会人3年目とかに出会っていたら、別れなかったのかも。いや、やっぱり好きになっていなかったかも。いや、やっぱり別れてたかも…
わからないけど、戻りようもない。

爽やかな終わりが、“今”らしくて、
とても優しかった。