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花束みたいな恋をしたのneneko222のレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
3.7
二人がうまくいかなかった要因は環境変化ではなく、「好き」は似てるのに「好き」の理由や、起きた事象についての本人の受け取り方、バックボーンが違うところかなと思った。
絹ちゃんはバターのついたパンがバターの面から落ちることや、ミイラや、恋愛が終わる確率やら、物事の終わりにすごく敏感だからこそ、「今」を大事にしてる。そしてずる賢く生きる両親を嫌って、自分に正直に生きていきたいと思っている。
麦くんは田舎からの帰省のプレッシャーや、クリエイターの先輩の彼女が(望まずに?)夜の仕事をしていること、仕事で大きな失敗をする事件、先輩の死、イラストの仕事で買い叩かれるなど、最悪の最悪を見てきたからこそなんとか這い上がって幸せな現状を維持するという「未来」を大事にしてる。
二人とも大事にしてる時間軸が全然違う。正直、どっちも間違ってると思った。それは彼らがあまりにも若く未熟であり、責められることではないかなと思うけど。

そして大学生をモラトリアム期間というけど、二人の大学卒業〜社会人5年目くらいまでの「社会人モラトリアム期間」のあのかんじ、わかるなあああとすごく共感。
あんなに好きだった趣味と距離ができて、変なビジネス本を見る人と、そんな人を見て距離を感じる人がいて。

大学までは「好き」を大事にしよう、個性が大事な時代、発信力が試されるTwitter、Instagram、就活の自己分析で自分とは?を突き詰めてきたのにいざ社会に出たら個性を出すにはまず一人前にならないと認められないということが身に染みて、仕事に必死になる。でもあんなにバカにしてた労働もやってみると悪いことばかりじゃなくて、案外楽しくて夢中になる。そのかわり「個性」「趣味」を楽しむ人に対して「好きを仕事に?そんなの限られた人だけ」と言いたくなる気持ち、ああわかる…
高校まではメイク禁止!と厳しく言われてたのに、就活ではメイクはマナー!と言われる違和感のような。

まぁでもここ最近は副業やら企業やらでだいぶ自由な時代になったと思うのであれを見てわかる…!となるのは私と同世代のミドサー世代だろうな、と思うけど。
個性、自由を発信するInstagramのインフルエンサーとそれをバカにするTwitter民の対立構造の溝はこんなところから産まれるのかなーなどなど思い馳せてしまった。

最後、恋愛は分け合うものではない、1人にひとつ。と結論づけた彼らと、そんなことわかってるけど色々うまくいかないこともある我々へエールを送りたくなった。
2人の違いを受け止めて、今と未来を同時に大事にすることができたらいいよね。
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