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カモン カモンのmiwkaのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
3.5
マイク・ミルズ監督最新作。

ホアキン・フェニックス演じるラジオジャーナリストの中年独身男性が、9歳の甥っ子を急に預かることになる。彼らの交流を描きながら、様々な土地に生きる子供達へのインタビューによる生の声を綴っていく物語。

モノクロの映像が、アメリカの各土地で売られる絵葉書のようで、非常に美しかった。建造物、公園、木々…それらの中を、二人が歩いていく。

二人の、遠くも近くもない距離感が絶妙。少年は決して扱いやすい子ではないが、主人公は実に誠実に彼に寄り添い、言葉に耳を傾け、彼の問題に共に向かおうとする。
子供に対する平等な姿勢にやや驚いた。怒らない、感情的にならない、謝る。徹底したこの姿勢、これはアメリカ特有の子育てなのか、それとも現代社会に通ずるものなのか。大人には、特に主人公のような親以外の立場の人にはなかなかの試練の連続だと思う。
そしてこの姿勢で甥の問題に直面して彼の言葉に向かいながら、主人公は彼本人の、今まで逃げていた問題と向き合うように変化していく。
行きつ戻りつつの距離感がよかった。
私が好きだったのは、「一緒に寝ていい?」「いいよ」と、2人が同じベッドで寝るシーン。

そしてドキュメンタリーで撮影した、子供達へのインタビューが続く。子供って本当に鋭くて、自分も人もよく見えている。未来への希望も、ただ夢を見るだけでない、地面に根を張った展望を語る子が多く、感心してしまった。そして言葉を操る多才さに、アメリカの子供達の感情表現の豊かさを感じた。

映像と言葉を巧みに使った、今までにあまり見たことのないタイプの映画だった。
自分の子供との付き合い方も見つめ直させられる作品で、印象に残った。

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