るなるな

カモン カモンのるなるなのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
5.0
鑑賞後真っ先に思ったのは、人が育つということがいかに大変なことであるかということ、でした。

人生誰しも浮き沈みがあり、その浮き幅も沈む深さも人それぞれ、時によってバラバラです。その浮き沈みに左右されずに多くの方がいわゆる"普通"に"真っ当な"人間に慣れている理由、それは育ててくれる大人がいること。
敷かれたレールの上を綺麗に走るだけだったら楽なのに、人生はそうはいきません。どこかで脱線しそうになった時、またレールの上へ導いてくれるのは大人です。また、この道もいいかもしれないと教えてくれるのも大人です。
わたしたちは大人のこの絶対的な安心感に寄りかかってすくすく育つことができたのだと、改めて周囲の人達への感謝が募りました。

とはいえ、そんな大人にだってどんなレールの上を行けばいいか、正解なんて分からないし、途中で間違うこともあります。そんなとき、また大人を"大人"にしてくれるのは子供の存在です。

大人はかつて自分が子供だったのに、子供が何を考えているかわからないときがあります。子供も大人が何を思って自分に言葉をかけるのか、その全てを把握することはできません。
でもお互いの間に愛情があれば、その障壁は越えることができるのだと、ジェシーとジェシーを取り巻く大人たちを観ていて感じました。

ホアキン・フェニックス、ジョーカーの恐ろしい姿はどこにいったのかと驚くほど今回も役への入り込みがすごい…
過去に過ちがあり、少し傷を負いながら過ごす中年役が見事にハマること。ジェシーへの優しい眼差しが今思い出すだけでも泣けてきます。

全編白黒だったのも、映画を観はじめてからなるほど、と思いました。
この映画は視覚で訴えるものではなく、聴覚で、日常が奏でる音、登場人物のセリフに集中すべき映画なのだと思います。

わたしは出産も子育ても経験していませんが、その機会が来た時はこの映画を思い出したいです。
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