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カモン カモンの空間のレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
5.0
評判が良さそうだったので視聴。

いい映画。流石A24、期待を裏切りません。
全編白黒だとなんで現代の風景でもほんのりと懐かしい感じがするんでしょうね。「フランシス・ハ」も「ROMA」も(後者は現代の話ではないですが)好きです。

この映画は音楽を含めて、"音"自体が良かったです。機材いじるの楽しいね。あと主人公が子供たちにインタビューをする理由について、何か地方による環境の違いを探るとかそういう社会的な意義のためにやってるのかと思ったら、主人公自身は「音という日常的なものを録音すると不滅なものに変わるから」というのが好きだからと言ってて、そこも意外と単純で良かったです。まあ仕事なので多分あとで何かしら意味のある形にするのだろうとは思いますが。

それにしてもあの子供達のインタビューは全て率直で、自然体で素晴らしかったと思います。あれは演技ではなく本当のインタビューなんでしょうか?だとしたらいいな。

あとは劇中に出てくる本の引用のチョイスも最高だと思います。特に母親の役割について書かれた本と、ジャーナリストについて書かれた本。ジャーナリストが誰かに取材をする時、その時間だけは彼らの体験を見聞きして共感するけど、結局ジャーナリストは「1日体験学習」みたいな感じで元いた安全な所に戻ってしまうんですよね。一方で取材対象はずっとその場所に留まらなければいけない…という。ジャーナリストは彼らなりに、取材対象の現状を伝えて世界を変えようとしているのかもしれませんが、取材される側から見るとどうしても「消費」とか「搾取」という言葉が浮かんでしまいますよね。

この映画は伯父と甥という一見ありがちな組み合わせの心温まる物語に見えますが、実際はさりげなく「母親の役割」とか「アメリカの格差」とか「ジャーナリズムの功罪」とか「精神障害や認知症が家族に与える影響」とかいろんな問題を提起しているように思えます。そういう意味でも興味深い映画でした。
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