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アントマン&ワスプ:クアントマニアのRのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

映画館で。

2023年のアメリカの作品。

監督は「イエスマン "YES"は人生のパスワード」のペイトン・リード。

あらすじ

サノスとの最終決戦で一躍英雄となったアントマンことスコット・ラング(ポール・ラッド「ゴーストバスターズ/アフターライフ」)は過去の犯罪も免除され、平穏に暮らしていた。そんなある日、スコットの娘キャシー(キャスリン・ニュートン「ザ ・スイッチ」)が今後の脅威に備えて量子世界へと信号を送る人工衛星を開発するが、起動した影響で突然装置が光を放ち、スコットたちは量子世界へと吸い込まれてしまう。

マーベル・シネマティック・ユニバースの31作目にして、「アントマン」シリーズの3作目、そして昨年11月の「ブラック・パンサー ワカンダ・フォーエバー」で幕を引いた「フェーズ4」から早2ヶ月…遂に今作から「フェーズ5」の開幕である。

予告やら事前情報ではサノスに次ぐラスボスクラスで、ドラマシリーズ「ロキ」のラストでも「変異体」として登場した征服者カーンが遂に満を辞して登場!というわけで期待半分不安半分早速公開2日目の今日行ってきました!

結論としては…うーん、まぁまぁ…面白かった!けど、なんかモヤモヤする〜って感じでした。

お話はあらすじの通り。今まで離婚して、犯罪者のレッテルを貼られ、散々な目から始まったアントマンことスコットも今は最愛のパートナー、ワスプことホープ(エヴァンジェン・リリー「クライシス」)とも出会い、今まで離れ離れになっていたホープの母でハンク(マイケル・ダグラス「ウィン・ハンドマン-名優を育てる演技指導-」)の奥さんジャネット(ミシェル・ファイファー「フレンチ・イグジット さよならは言わずに」)も戻ってきて、サノスとの戦いで一躍ヒーローとなり、一家揃って仲睦まじく過ごしている冒頭。

しかも、自叙伝まで出しちゃってるしwそういえば、あの戦いからこういう月並みの栄誉を求める人ってなかなかいなかったからなんか新鮮wこういうところもアントマンってなんか庶民的だよなぁw

で、そんな中でキーとなるのがスコットの前妻との子どもで一人娘のキャシー演じるキャスリン・ニュートン。俺は「名探偵ピカチュウ」とか俺はまだ観てないけど「ザ ・スイッチ」とか結構いろんな作品(主にティーン向け)に出てきてる女優さんなんだけど、この女優さんの凛々しい顔立ち含めてまさに跳ねっ返り娘って感じのキャラクターのキャシー。冒頭から昔のスコットよろしく留置所入りしてるし、警察官に対しても不遜な態度で不敵。かと思えばそれを悪びれる様子もなく、トラブルメーカー気質が伺える。ただその理由も「父親のようなヒーローになりたい」という信念からで後述の量子世界に行ってからも見ず知らずの量子世界の人々のピンチに父親の制止を振り切り、お手製のヒーロースーツで立ち向かう正義感だということもわかり、熱いキャラクター。フェーズ4でも魅力的なティーンガールヒーローがたくさん登場したけど、どうやら後々コミックではスタチュアというヒーローにキャシーもなるらしく今後が楽しみなキャラクターだ。

で、そんなキャシー、どうやら量子世界に俄然興味があるらしく、スコットに秘密裏にハンクおじいちゃんの指導を受けて、なんと量子世界に信号を送る衛星を開発して、その誤作動でスコット、キャシー、ホープ、ハンク、ジャネットが量子世界に送られてしまう。

で、今回はそんな量子世界が主な舞台なわけなんだけど、それまでも2作目の終盤に出てきたり、「エンドゲーム」で重要な要素で出てきたりとちょくちょく出てきたりわけなんだけど、この世界についに足を踏み入れるというわけでなんとなく「ミクロの決死圏」的な世界なのかなぁーと思っていたらよりセンス・オブ・ワンダー!最近でいうと同じディズニーの「ストレンジ・ワールド/もう一つの世界」のような「なんかよくわからないけど細菌チック」な異世界が広がっているワクワク感!太陽?と思いきや、グイグイ近づいてくると攻撃的な生き物だったり、その太陽生物がアントマンとの戦いで退くとその影から超巨大アメーバみたいな生物が出てきたり、またスコットたちとは離れ離れになってしまったホープたちが移動手段として使う超巨大エイ(でも、よりデフォルメチックでつぶらなまなことかキュート!)みたいなやつとかこういう未知の世界につきものの異生物たちがわんさかいて、それ自体楽しいんだけど、それでいて、「ストレンジ・ワールド」と異なるのがなんとそこに住まう異星人たちがたくさん登場するという点!!しかも、普通に量子世界で高度な文明を築いていて、多分作り手も、そして観る側も1番連想するであろう「スターウォーズ」の「カンティーナ酒場」のような頭が鉱石で出来てたり、赤いフードに身を包んで目だけが爛々と光っていたり、屈強な体に頭だけがコイルみたいなやつとかとにかくエイリアンチックなやつらがゾクゾク出てくる!その中でも特にお気に入りなのがスライム型の異生物、ヴェブ!!見た目は全体が赤くてナメクジにスライムを足して手足が生えたようなキモカワイイやつなんだけど(後半でバタバタと駆け回る姿がまたキモい笑)、とにかく「穴」に目がなくて全く穴が空いていない自分に対して、7つも穴がある人間に興味深々!!終盤では敵の銃弾で蜂の巣になるも「遂に穴ができた〜」と喜び勇んで、敵を捕食者の如く飲み込む恐ろしさ!!それまでのコメディ映画に比べてシリアスになりがちな本作屈指の癒し系だ。

また、事前に出る出ると予告されていたビル・マーレイ(「最高のカンパイ! 戦地にビールを届けた男」)もここで登場!今作では量子世界で名を馳せたジャネットとかつて共に戦ったクライラーというキャラを演じているんだけど、マーレイお得意のおとぼけ演技もよろしくなかなか油断ならないキャラクターとなっていて新鮮だった。

ただ、この手の名優、「ガーディアンズ」のスライや「ソー バトルロイヤル」のジェフ・ゴールドブラムよろしく「なんかもったいない」使い方をしており、ここは「まず」不満点。

そして、くだんの出ました!今後のMCUにおいて、とにかく重要なポジションを担うであろう大ボス、征服者カーン演じるジョナサン・メイジャーズ(「ディヴォーション:マイ・ベスト・ウィングマン」)!!「ロキ」では、その終盤変異体として「在り続ける者」として登場したけど、あちらはやや「食えない」キャラクターだったのに対して今作のカーンはかなり理性的。ただ、どうやら「マルチバース」の「自分」たちによって、量子世界に追放されたらしく、脱出するためにはとにかく手段を選ばず、そのために量子世界の「征服者」として君臨しつつ、人質として捉えたスコットの前で同じく捉えられたキャシーを痛めつけて交渉しようとしたりとやはり悪役らしく冷酷な面も持ち合わせている。

また、アメコミでは紫のヘルメットに青い顔が特徴的なんだけど、本作ではそのヘルメットを被ると内面が青くなることでその特徴を表現。攻撃時はそのヘルメットをかぶると臨戦態勢となり、目を光らせながら怒声を上げて波動?のようなものを放って敵をバッタバッタと撃ち殺したり、攻撃を跳ね返してカウンターを食らわせたり、防御時はドーム状のシールドで絶対防壁したりと攻守共に非常に優れた、まさに強敵となっている。

ただ、このカーンに関しては個人的に特にモヤモヤする部分があって…ここは後述。

あと忘れちゃならない。そんなカーンに次ぐ中ボスとして登場するのが満を辞して登場する人気ヴィランのM.O.D.O.K!!あのキャラがなるんじゃないか?このキャラがなるんじゃないか?とファンからは様々な議論が交わされていたわけなんだけど、なんとそんなモードックに変ずるのは一作目でアントマンとイエロージャケットとして戦ったコリー・ストール(「ウエスト・サイド・ストーリー」)演じるダレン・クロスだというサプライズ!!なんとなくボサボサ髪のイメージがあってハゲ…スキンヘッドのダレンがモードック?と思ったんだけど、あのでっかい顔に赤ちゃんみたいなちっこい手足のその姿はまさしくモードックで、ちゃんと顔立ちもコリー・ストールの顔を引き伸ばしてでっかくしたような感じで作り手のリアリティラインギリギリを生かした努力が伺える!一作目からの因縁でスコットやハンクと戦ったりするんだけど、終盤ではキャシーとの会話から改心、「クソ野郎じゃなーい!」とカーンに一矢報いて潰える様はコミカルながら印象的だった。

で、そんなカーンの攻撃で窮地に陥るスコットたちなんだけど、終盤での戦いはまさにペイトン・リード監督が描く「MCU版スターウォーズ」の体をなしてテンションも最高潮!!量子世界全域に送る回線を傍受し、キャシーが「小さき者を無視するな」とカーンの「植民地支配」の重圧に耐えかねていた住民たちに反撃の狼煙を掲げるシーンでスコットが「こんなに成長して…」とセリフで言わずとも完全に父親目線で微笑ましく見ているところもグッときたし、反乱軍とばかりにヴェブやリーダー的キャラのジェントーラ(ケイティ・オブライアン)をはじめ総攻撃でカーン軍とぶつかり合うシーン、そしてアントマンといえばの進化したアリちゃんたちが援軍として加わり、あろうことかラスボス、カーンにその軍勢の力で打ち破る様は、まさに「小さき者」が「強大な敵」を倒すジャイアント・キリング!といった感じでカタルシスがあった。

ただねー。やっぱなんかモヤモヤが残る。今作の特徴であるコミカルな要素やアントマンとしての小さくなったり、大きくなったりのギミックを活かした戦いが意外と少なかったりと全体的にモヤる感じはあるんだけど、やっぱ1番モヤったのはカーンね。

うーん、なんかサノスに劣っちゃうというかなんというか。サノスと違って、元は未来人という設定はあっても人間ということで戦闘時に苦戦して苦悶の表情を顕にしたりとどこか人間臭かったり、やっぱアリちゃんに負けちゃうというところも「えー、倒されちゃうの?」という感じ。

ただ、この件に関しては「あくまで」、今作でのカーンは倒されてしまったけど、カーンの最大の強敵たりてる所以が「マルチバースを自在に行き来できる」という点であり、ラストで登場したけど、今作のカーンが倒されても第二、第三のカーンが続々と控えているわけで、その点は「多」の力の脅威を感じさせるわけなんだけど、「個」の力でアベンジャーズ、そして全世界の人々の半分を消し去るというインパクト絶大なサノスと比べるとやっぱ小物臭く感じちゃうし、見劣りしちゃうよなぁ。

ラストのギャラリーで「ウェーイ!」的なカーンがいたけどなんかすげぇメイジャーズのコワモテがそうさせるのか「輩感」に溢れていたのもより一層そう感じさせる笑。

だから「フェーズ5」も今作から始まりなわけなんだけど、こんな敵で「大丈夫?」という感じ。

ただ、この「大丈夫?」って感覚が悪い意味だけじゃなくて、ラスト、冒頭に被せる形で元の世界に戻って元通り「一件落着」と思いきや「待てよ」と。ただ単に1人のカーンを倒しただけであって、世界を救ったようで全然めでたしめでたしじゃねぇよとこちらにうっすらと警鐘を鳴らしておきながら「ま、いっか!」と朗らかに終わる「不穏」なエンドなのは今までになくて秀逸だと思う。

そんな感じでラストにアントマンらしくない問題提起で終わる本作。果たしてこのカーンがサノスを超えるラスボスになっていくのか、そしてそんな「多の力」を使うカーンに対してアベンジャーズたちはどのようなピンチを掻い潜り、「シークレット・ウォーズ」に繋げていくのか?その動向を1ファンとして見守っていきたい!!

あと、書き忘れてたけどクライラーとの対面後の戦闘シーンでジャネットが「援護して」とハンクに呼びかけるのに対して「永遠にな!」と答える2人の夫婦の信頼関係が伺えるシーンがとってもステキだった!
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