たいち

子どもたちをよろしくのたいちのレビュー・感想・評価

子どもたちをよろしく(2019年製作の映画)
4.3
「うちの家族仲が良くなくてさぁ……」みたいな相談をここ最近メチャクチャ受けるのでかなりタイムリーな映画だったんだけど、この前『リトルデビル』のレビューに書いた家族に関する考え方が完全に打ち砕かれてしまった。人間は生まれるときに、運動神経ガチャとか音感ガチャとか自分では変えられない生まれつきの要素のガチャを引くと思うんだけど、家族ガチャで大ハズレを引いたらもう人生詰みですよねってことが108分間ずっとスクリーンに映し出されていた。たったの1ミリも救いが無い映画で、ずっと胸が苦しくて、『岬の兄妹』を観に行ったときのことを思い出した。
ある程度成長してからなら家族と決別して、"前時代的正しい家族像"(別に仲が良いに越したことは無いので、今でも正しいっちゃ正しい)に夢を抱かずに、自分の生き方を選べるかもしれないけれど、「中学生でこの状況に置かれたら、そりゃ"前時代的正しい家族像"を求めてしまうよな」と思った。特に家族仲の良かった時代を知っているのならば尚更。今まで割と無責任な考えを抱いていたことは反省しないといけない。でもその一方で、ここまでの無理ゲーを見せつけたら、「じゃあ自分たちは何が出来て、何をすればいいの?」とも思ってしまう。極めつけは作中でデリヘルで働いているお姉ちゃんが弟に言い放った「分かったような口聞いてんじゃねぇよ」って言葉。もうこれを言われちゃったら、何も言い返せなくないじゃん。確かに自分も「私/僕そういうことに理解あるから」みたいなこと言われたら、「は?お前に何が分かるんだ、はっ倒すぞ」って思うから言いたいことは分かるんだけど、そのように言い切られちゃったら、当事者以外には本当に何も出来なくなっちゃう。となると、この映画が伝えたかったことは何なんだろう。「こんなに辛い状況で頑張ってもがき苦しんでいる子供がいます。でも、どうせ分からないので理解したつもりにはならないでください。」ってことなのか?諦めを促しているのか?結局、観た人にどうして欲しいのかな。あとこれは関係ないけれど、こういう正解の無い問題について考えまくった末に、「もう全員、去勢しちゃえば悲しい思いもする子どももいなくなるし良くない?」みたいなあり得ない考えで万事解決ヅラしちゃうのは自分の良くない癖だなと思った。
内容に関しては話の展開が読めちゃうし、登場人物の行動も理解できない点が多かったけど、まぁそもそも周りの環境が違いすぎるので仕方ない!と思うようにする。特に"アンチデリヘル十人衆"みたいな演出が急に安っぽくて嫌だった。稔に幻聴が聞こえてるかのような、唐突&過剰な激ダサ演出だったし、あんなに性産業にヘイト溜めてるクソダサい大人たちはもう殴って分からせようぜ。幸いなことに自分の周りにはそういう人が全然いないだけかも知れないけど、マジでアレが世間の相違なら社会に出たくないよ。
あと、"よろしく"されるべき子どもたちはこの映画を観られないだろうし、そもそも知ることすらないだろうと思う皮肉よ。観に来ている人たちもおじいさんやおばあさんばかりで、子ども(親の世話になっているという意味合い)は僕と僕と一緒に見ていた人しかいなかった。
たいち

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