KAIRI

バビロンのKAIRIのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
5.0
音楽と映画の見事な融合🎶
若き天才監督デイミアン・チャゼル作品
その3『バビロン』


『セッション』『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼルの新作💁🏻‍♂️
ジャズ音楽と強烈な映像が観客の脳を破壊するぶっ飛び映画でつい魅入ってしまいました😮
象のお尻の穴から飛び出るフンやドラッグやセックスが行われるド派手パーティーから始まる強烈なスタート!
ウンコや吐瀉物、乱交など下品かつ悪趣味な演出が多く、その演出は黄金時代のムチャクチャなハリウッドを表すのにピッタリです💊💩🤮
「気持ち悪い!」「汚い!」という言葉が飛び交う映画だと思いますが、この映画においては全て褒め言葉ですよ😌

サイレント映画からトーキー映画へと移り変わる革命の“輝き”を映すのではなく、革命によって“輝きを失った人”や“時代に置いてかれた人”を映すという着眼点も面白い。
その設定をフリとして覆し、全回収するラストの映像も素晴らしかったです✨






↓⚠️ここからネタバレあり









☆パーティーシーンについて
・観た人が印象的なのはやっぱり冒頭のパーティーシーンですよね。
スタッフや出演者などの映画の制作に携わってる人達で開かれてるパーティー。
しかし、当たり前のようにドラッグ・セックスが起きていて裸で踊り狂ってる…
今の時代、ありえないですよね😮
綺麗なダンスとかハチャメチャな中で、奥や手前に汚いシーンが映るという見せ方もたまらなかったです😌
音楽が生演奏なあたりも最高でした。

・“悪い意味で”豪華でド派手なハリウッドの姿。
僕たちが持ってるイメージ像をぶち壊すリアルで汚いハリウッドの姿がパーティーシーンに詰まっていましたね。

・パーティーシーンではずっと爆音で流れてるジャズ音楽!🎺🎶
演奏シーンは迫力あるし、めちゃくちゃノリノリになれて最高です🤗
酒池肉林パーティーにベストマッチ!
特に予告編でも流れていた『Voodoo Mama』は最高にカッコイイですね😌

・パーティーシーンで大切な登場人物6名がサラッと登場します。
1,サイレント映画の頂点に立つ超一流の映画スター ジャック
2,底知れぬ野心を胸にハリウッドの熱狂の渦に飛び込んでいく新人女優 ネリー
3,映画製作を夢見るメキシコ出身の青年 マニー
4,トーキー映画になり一躍スターの座に躍り出たトランペットの名手 シドニー
5,俳優のキャリアを左右するほどの力を持つゴシップ・コラムニスト エリノア
6,「東洋のエメラルド」と評される女性歌手 フェイ

・ネリーとマニーの会話
2人でドラッグをやるシーンの会話がかなり重要でした。
「映画の中なら死ねる」
「大きなものの一部になりたい」
マニーの“映画に関わりたい”という思いが伝わるこの言葉は、作品のテーマやオチ、ラストシーンに大きく響いてきます✨


☆サイレント映画の撮影
・広大な荒原のような場所で様々な映画を同時に撮影しているという現在ではありえない撮影現場😮
サイレント映画だからこそできる撮影方法ですね。

・撮影現場で死人が出るのは当たり前!
ケガ人や死人が出るのは当たり前であり、機材も壊れまくりの撮影現場。
使用されるキャストは、いつ死んでもいいような人物ばかり…
戦闘シーンを撮影する際には、キャストを実際に戦わせてしまうムチャクチャぶり🙄
キャストの一人が旗に貫かれて死んでしまうシーンでは、「あぁ〜、死んじゃったね」程度の軽さ🤣

・天才俳優たちの光る演技力
1,ネリー
代役として出演したネリーは天才的な演技を披露します。
涙は何回も好きなタイミングで流せるし、どんな無茶振りをされても対応できる素晴らしさ✨
涙を1滴流すモノクロのネリーの姿は輝きまくってますね😢
ここから野心的かつ色気のある女優としてスターの階段を駆け上っていくスター誕生の瞬間でした😮
2,ジャック
サイレント映画時代のスターである彼は、酔っ払っている状態でも撮影となれば見事に役を演じきる凄さ✨
ジャックの真横に槍が飛んでくるシーンで「この槍、もっと汚せ!」と美術にキレてるシーンは面白かったです🤣

カメラが壊れる

マニーがカメラを手に入れる

救急車で現場に戻る

ジャックが名演技をしてして撮影終了

全員で「ウオオオオッッッッ!!!!!」
この一連の流れはテンポ感が良くて、たまらなかったです。


☆トーキー映画の撮影
・スタジオで音をたててはいけない
音声を録音することができるようになったものの、たてた音はすべて拾ってしまう当時の機材😔
そのため、たった数秒のシーンでもスタジオを借りなければいけない。
履く靴はゴム製でなければいけない。
赤いランプで“撮影中”を示す。
音をたてないように工夫され、撮影関係者は息を殺して撮影していた。
このように、トーキー映画時代の最初はかなり撮影が大変だった様子🤔

・ブラックコメディが光る撮影シーン
「カメラ!サウンド!アクション!カチッ…🎬」この何テイクも繰り返すシーンはコメディ要素強めで面白いですし、撮影の大変さが伝わってきました👍

・サイレント映画時代との見事な対比
関係者は最小限でできるだけ静かに…
たくさんの人が同じ場所でわちゃわちゃ撮影してるサイレント映画の撮影シーンとは真逆で面白い😯
そこで明らかに浮いてるネリーの姿…
これも重要ですね🙄

・トーキー映画になったことで“声”が重要になってくる。
そのため、訛ってる人やガラガラ声の人は起用できなくなってしまう。
この時代の変化によって輝きを失った人が何人いるか…
登場人物たちもその中の1人1人です😔


☆人物の顔
・狂ったように踊ってるネリーの様子を見るマニーの顔。
まるでスターになっていくのを確信したかのような見事な顔でした。

・蛇と格闘するシーンで、急にジャックの顔がアップになる長いシーンがありましたね。
まるで輝きを失っていく未来を見据えるような哀愁漂うジャックの顔…
あの顔が映ったあとの蛇でパニックになってる様子はあまりにも滑稽に見えますね😔


☆時代はトーキー映画へ…
トーキー映画になるにつれて登場人物の輝きが失っていく過程は辛かったですが、たまらなく良かったです。

1,ジャック
・声が笑われてしまう。
映画館で自分の真剣な演技で爆笑が起きているというのは辛かった。

・エリノアとの会話。
「あなたの時代は終わった」と直接的に言われてしまうこのシーン。
映画の興行収入や俳優の運命を左右する彼女が直接的に言うことで、彼は終わったんだなって確定されるシーンでもありましたね😔
また、自分が実際にスターであったということを再認識させてくれるシーンでもありました。

・クソ映画に出演。
どんどん作品に呼ばれなくなったジャックはZ級映画に出演するようになってしまいます。
電話でクソ映画の出演を交渉されるシーンも非常に辛かったですね。

・ジャックの自殺
彼はスターのまま死ぬという道を選びました。
自殺するまでの長回しはドアの隙間から観客が覗いてるようなアングルで、間近で彼の死を見るような感覚でした。

2,ネリー
・トーキー映画になることで、彼女がスターになれた要素でもある野心的でオリジナリティのある演技ができなくなってしまいます。
正確な位置に立って演技をしないといけない。
大きな声は出せない。
自分が縛られていく苦しさが伝わってきました。

・ギャンブルで借金まみれになる。
これは時代関係なくネリーが100%悪いですが、落ちぶれていく引き金のひとつでしたね。

3,マニー
基本的にネリーの暴走の巻き添えをくらってた印象。
彼もサイレントからトーキーへの移行を経験した映画関係者の1人です。

4,シドニー
ただのトランペット奏者だった彼はトーキー映画になってから俳優としていくつかの作品に出演するようになります。
しかし、黒人であることを象徴するために顔に黒い塗料を塗るという選択を迫られてしまいますね。
塗料を塗って出演するも映画業界から彼は姿を消します。

5,フェイ
彼女はスターのアジア女優でしたが、LGBTを理由に出演が減ってしまいました。
映画の歴史が移り変わり、出演者の起用に様々な制限が設けられたことが伝わる人物でした。


☆輝きを失った者への皮肉
・ネリーの死亡がわかる新聞が映るシーン。
大々的ではなく新聞の端っこに死亡のニュースがのるというさり気ない皮肉!

・マニーが家族と一緒に撮影スタジオに来る終盤のシーン。
しばらく見たあとに娘が言う
「飽きちゃった」
この言葉はグッサリと刺さります🥲
自分が輝いていた過去は娘にとってはどうでもいいと切り捨てるような辛いワンシーンでした。


☆作中の楽曲について
デイミアン・チャゼル監督と学生時代からタッグを組んでいるジャスティン・ハーウィッツの音楽は凄まじいです。
このパワフルさは雰囲気に合ってるし、登場人物にもベストマッチでした👍
作品にテンポ感やスピーディさを持たせてかけて抜けていくような見事な音楽だったと思いますね🙄


☆過去作との関連性について
デイミアン・チャゼル監督の過去作である『セッション』『ラ・ラ・ランド』のどちらも“夢追い人”の物語。
今回も過去作と同じく“夢追い人”の物語でした✨
“輝きと共に失っていくものがある”というところに関しては『ラ・ラ・ランド』と同じものを感じました。


☆個人的に要らなかったシーン
トビー・ワグマイアが登場する地下の見世物部屋を見物するシーン。
トビー・ワグマイアの狂気的な役は好きでしたが、あの10分ぐらいのシーンはかなり要らなかったと思います🤔
あそこのシーンだけ明らかに雰囲気が違いますし、全体的に不快でしょうがなかったですw
しかも、結局お金はゲットできずに終わったので全カットでもストーリー的には繋がると思いました🙄
歴史に残ってる事実らしいので百歩譲って良しとしときましょう…

☆映画というバケモノ
映画は様々な人物の夢であり希望を象徴するものでもありますが、本作では人を殺すバケモノ的要素も詰め込まれていました。
決して「映画っていいよね!」では済ませない残酷な物語です。
どちらかと言うと本作は映画の残酷な部分を見せるシーンが多かった印象でした。
しかし、その残酷さもプラスに変えてしまうエンディングには鳥肌がたちました。


☆エンディング
・『雨に唄えば』とマニーの自分自身の人生の重ね合わせ。
『雨に唄えば』はサイレント映画からトーキー映画に移行する様子を映し出したコメディ映画です。
まさにマニーがこの映画を見ることで自分の人生と重ね合わせて涙を流したということですね。

・老若男女、様々な世代や国の人が映画を観てる所をなめるようにカメラが流れていく演出。
この演出は「映画って何故見るんだろう?」と観客に問いかけるような、物語の中に観客も巻き込まれるような、そんな演出だったと思います。

・映画の発展(映像技術の発展)に貢献してきた映画たちがモンタージュとして流れるエンディング。
このモンタージュで流れる作品はこちら
👇

エドワード・マイブリッジ
『動く馬』
(1878年)

エジソン
『アニー・オークレイ』
(1894年)

リュミエール兄弟
『ラ・シオタ駅への列車の到着』
(1895年)

F.S.アーミテージ
『真珠の誕生』
(1901年)

ジョルジュ・メリエス
『月世界旅行』
(1902年)

フェルディナン・ゼッカ
『アリババと40人の盗賊』
(1902 年)

エドウィン・S・ポーター
『大列車強盗』
(1903年)

ウィンザー・マッケイ
『リトル・ニモ』
(1911 年)

D.W.グリフィス
『イントレランス』
(1916年)

チャーリー・チャップリン
『チャップリンの拳闘』
(1915年)

ルイ・フイヤード
『レ・ヴァンピール吸血ギャング団』
(1915年)

ラディスラフ・スタレヴィッチ
『ナイチンゲールの歌声』
(1925 年)

フェルナン・レジェ
『バレエ・メカニック』
(1924年)

アラン・クロスランド
『ジャズ・シンガー』
(1927 年)

ダドリー・マーフィー
『ブラック&タン』
(1929 年)

チャールズ・ライスナー
『ハリウッド・レヴィユー』
(1929年)

E.A.デュポン
『ピカデリィ』
(1929 年)

ヴィクター・フレミング
『オズの魔法使』
(1939年)

セルゲイ・M・エイゼンシ
『イワン雷帝 第2部』
(1944年)

メアリー・エレン・ビュート
『タランテラ』
(1940年)

田中絹代
『恋文』
(1953年)

サタジット・レイ
『大地のうた』
(1955 年)

チャック・ジョーンズ
『カモにされたカモ』
(1953 年)

『これがシネラマだ』
※ジェットコースターの映像
(1952年)

ウィリアム・ワイラー
『ベン・ハー』
(1959年)

ルイス・ブニュエル
『アンダルシアの犬』
(1928年)

アルフレッド・ヒッチコック
『サイコ』
(1960年)

ハンス・リヒター
『金で買える夢』
(1947 年)

マヤ・デレン&アレクサンダー・ハミット
『午後の網目』
(1943年)

カール・セオドア・ドライヤー
『裁かるゝジャンヌ』
(1928年)

ジャン=リュック・ゴダール
『女と男のいる舗道』
(1962年)

ウンベルト・ソラス
『ルシア』
(1968年)

フランシス・トンプソン
『N.Y.,N.Y.』
(1957 年)

ウスマン・センベーヌ
『ボロム・サレット』
(1963 年)

ロマン・ヴィニョリー・バレット
『黒い吸血鬼』
(1953年)

スタンリー・キューブリック
『2001年宇宙の旅』
(1968年)

ジャン=リュック・ゴダール
『ウィーク・エンド』
(1967年)

ジョン・ホイットニー
『MatrixⅠ』
(1971年)

エド・エムシュウィラー
『Sunstone』
(1979年)

スティーブン・スピルバーグ
『レイダース-失われたアーク(聖櫃)』
(1981年)

スティーヴン・リズバーガー
『トロン』
(1982年)

ジェームズ・キャメロン
『ターミネーター 2』
(1991年)

スティーブン・スピルバーグ
『ジュラシック・パーク』
(1993年)

ウォシャウスキー兄弟
『マトリックス』
(1999年)

ジェームズ・キャメロン
『アバター』
(2009年)

イングマール・ベルイマン
『仮面/ペルソナ』
(1965 年)

※どこか間違えていたらすいません

このモンタージュの終盤には作中の人物が出演した作品も含まれていて、彼らは輝きを失ってもなお“映画”という“大きなものの一部”になり、永遠に輝き続けるという意味だと捉えました🤔
パーティーシーンのマニーの言葉やジャックとエリノアの会話などが強い意味を持ってくるエンディングでした。
「映画は不滅だ!」というチャゼル監督の強い意志がヒシヒシと伝わってくるエンディングでしたね✨
このエンディングにはやられました…
映画史に残る素晴らしいエンディングだったのではないかと僕は思います💁🏻‍♂️

以上、『バビロン』でした。
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