エヌシマゴリラくん

STAND BY ME ドラえもん2のエヌシマゴリラくんのレビュー・感想・評価

STAND BY ME ドラえもん2(2020年製作の映画)
3.0
評価:いちおう、褒め
「ドラ泣きふたたび。」のフレーズや「のび太、逃げた。」のプロモーションに若干の違和感を感じ、二の足を踏みながらドラえもんファンのひとりとして「STAND BY ME ドラえもん2」劇場で、それもIMAXで観てきた。

前作「STAND BY ME ドラえもん」では“原作レイプ”と思うほどまで怒りの感情に揺さぶられたが、今回はどうだろう?
そこまでの拒絶感がなく”セカンドレイプ”とまでは思わなかった。
これは前作で『STAND BY ME』シリーズは、山﨑監督の考えた「のび太の最強ご都合日記」というドラちゃんと仲間たちを3DCGのおもちゃに使った二次創作ものだ、観る側のとハードルが下がったからかもしれない
(おそらくこの点を許容できないのであれば、『ねじまき都市冒険記』を最後に映画ドラえもんは観てはいけないのである)。

一応フォローを入れると、作品全体をボロクソにいいすぎるものではなく、制作チームなりの「ドラえもん愛」は端々から感じられるし、ストーリーの起伏は少ないながらも原作ながらのドタバタ感と「おばあちゃんの思い出」と「ぼくの生まれた日」をうまく内包しつつ1作品として上手くまとめたなあと感心するほどである。

特に、結婚式の列席者が涙ぐむ表情の作り方は秀逸だったし(ストーリー運びに若干違和感を感じるところはあるものの)しっかり結婚式というエンディングに着地していったので、自分も結婚式に列席したような疑似体験をさせてくれるような感覚でもあった。
また、「入れ替えロープ」の魂が入れ替わるアニメーションを3DCG化した意義や、「わすれん棒」にこの映画のストーリーの矛盾点をうまーく回収する役割を持たせて、ひみつ道具を準主役にしてくれたところは原作「ドラえもん」を読んでいる時の“膝をうつ感覚”も蘇らせてくれた。

一方で隅々に"違和感"を覚えることも否定しない。
もちろん原作の複数の作品を繋げることで無理が生じていることが最大の歪みなのだが、ある意味で原作の漫画「ドラえもん」を忠実に切り貼りし、それも3Dでよりリアルにしてしまったことで、今現在の価値観と原作掲載当初との価値観の違いがより鮮明になってしまったことに起因しているのかもしれない(それと、個人的な意見だが、のび太のキャラデザがとても好きになれない)。

また、原作を知っていれば知っているほど、のび太が結婚式から逃げだす選択をするような男ではないので、そもそもこの映画の発想のスタート地点に違和感も感じる。
「怖い現実から逃げる」ような自分だけのご都合主義で動くのび太を描きたかったのであれば、1作目の作品のメッセージを自ら帳消しにしに行っている気がする。正直ここに出てくるのび太は、自分の知っている“原作のび太”ではないし、「ドラえもん」を "のび太の成長記"としてとらえるのであれば、成長が止まっていて完全に原作から逸脱した“異次元のび太”になっている。
さらにつけくわれれば、テンポ感がおかしいために、おばあちゃんってそこまで要求するキャラでしたっけ?って感じざるを得ないのだ。

あと、おそらく批判の最大の的となりうるのが、最後の方でとってつけたようにジャイ子をエクスキューズ的に出してるところ。
もともとドラえもんが未来からやってきた理由を考えると、そうやって出演させる行為こそ、その事実を思い出させて御法度じゃない?と。
実は原作の土台もそうなのだけども、この1作品のゴールを"しずちゃん=完全ゴール"に据えてしまったことで、現代の価値観とズレがより際立ってしまった構造になり、嫌悪感を感じる人が少なからず出てくるだろう。よって、このSTAND BY MEという世界線が許せない人に対してはおススメできない映画でもある。

あ、ちなみに私はドラちゃんが動き回ってるのが愛おしくて、それだけでも映画館で見てきてよかったなーっていう褒めの感想ですよ。念のため。

P.S. 2020年のドラえもん映画で本当に「ドラ泣き」するのであれば「新恐竜」のほうかと思いますので、選択をお間違いのなきよう。