評価:いまいち
ゾンビ・カーアクション・人間ドラマ・キッズ要素を混ぜたお子様ランチ。遊園地のアトラクション的な作品。
前作「新感染ファイナル・エクスプレス」に期待し鑑賞。
前作では、密室空間と 走ることのできる速いタイプのゾンビ を巧く絡めながら、ダメな父親が人間として成長していく姿や、最後の歌アロハ・オエに繋がる伏線など、テンポよく、時には緊張と解放を巧みに利用して、時間的にも、物理的にも、精神的にも追い詰める描写が秀逸だった。
今作でも、前半のアメリカのニュース映像や北朝鮮の描写なども用いてワールドワイド感を醸し出して一気に「新感染」の世界観にいざない、特にフェリーで感染者が発生し、"あのゾンビ" が増殖していく様は、まさにゾンビ×密室空間で観客の期待に応えてくれたのではないか、と思う。
一方で、後半については「暗がりでは光と音に反応する」ゾンビの習性を巧く利用したり、廃れたショッピングモールを使用するなど、ゾンビ映画への一種のジャンル愛を感じる部分や、キッズ・女性の活躍する様など褒め要素も沢山あったものの、盛り込みすぎていてゾンビ映画としての本質が消えているところが残念に感じた。
特に一般的には褒めにあがるかもだが、カーチェイスシーンのVFXの粗さが目立ち没入感に欠け、劣化版マッドマックををみているような残念な気分になった、というのが正直なところ。
カーチェイスを観に来たのであればよかったのかもしれないが「あれ?ゾンビ映画を観に来たんだよね?」という期待はずれ感がどうしてもぬぐい切れない。
人間ドラマとしても兄弟愛を語りたいのか家族愛を語りたいのか(「いつも変わらずにそばにいる存在は大切なんだよ」というメッセージはあったように感じるが)どっちつかずでやや薄っぺらく、尚且つ くどい印象。
また、エンディングにかけて、もはやゾンビがつけたし要素のような形で、すでに夜が明けているにも関わらず、都合よくゾンビが全くいなくなり、主人公たちが近づくとゾンビがギミックのごとく動きだす、まるで遊園地のアトラクションにのって安全な場所から予定調和を観てる印象で、ゾンビ・カーアクション・人間ドラマ・キッズ要素をあれこれ盛り込みすぎて、せっかくの良コンテンツが"お子様ランチ"化してしまったところがいまいちだった。
単体作品としての完成度は水準以上で娯楽映画として十分楽しめるのだが、前作の評価が高いというハードルが逆に仇となった形だ。ゾンビ設定のみの引継ぎではなく、どこかに、前作の少女や若い妊婦、主人公の働いていた証券会社やあのゴキブリ常務のバス会社を登場させるなど、前作ファンに対してちょっとしたサービスがあってもよかったのかな、と感じる。
これなら、前作と、ポセイドン、マッドマックス怒りのデスロードorワイルドスピード、スパイキッズをそれぞれ単体で観たほうがましかな?