りっく

ザ・ケーブのりっくのレビュー・感想・評価

ザ・ケーブ(2019年製作の映画)
3.8
「ラッカは静かに虐殺されている」「娘は戦場で生まれた」に続くシリアの実情を描いたドキュメンタリー。だが、本作は爆撃や虐殺の映像はほぼ出てこない。地下トンネルで負傷したり栄養失調になった民衆を診察する医師が主人公だからだ。

まず作品の序盤では、女性が医師として働くことの困難を描く。薬が入ってこないのに患者からは男性の責任者を呼べと言われ、やはり女性ということも関係するのか、調理係として他の医師の食事も作る。閉鎖的な空間で戦闘機が近づいてきたか耳をそばだてる日々にイライラが募っていく。

一方で医師としてもどうだ。自分たちは食事にありつけているのに、民衆たちは栄養失調で痩せ細っている。病気でも負傷していても十分な薬は手に入らず、終盤には重傷でもないのに化学兵器によって患者は命を落としていく。そんな光景をただ見つめるだけの無力感に苛まれ、罪の意識とトラウマを背負って生きていかねばならないのか。
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