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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のKentKajitaniのレビュー・感想・評価

4.5
左派の三島由紀夫が右派の東大全共闘の学生1000人を相手に行った討論のドキュメンタリー。

対立する者同士、険悪な雰囲気での討論になるかと思いきや、三島由紀夫は学生に対して最大の敬意を持って、時にはユーモアを交えながらも語りかけていき、当初の想定に反して全体的には温かい空気で討論は進んでいく。
ただし、そこで交わされる議論は生ぬるいものではなく、高度な知性と教養、そしてこの国をどうにかしなければならないという義憤を持った者達の議論は観ているこちらが汗ばんでしまうほど熱いものだった。

当時の東大生はここまで高度な議論ができたものかと、一応後輩にあたる訳だけども、あの議論の一端も担えそうにない自分の不勉強を恥じた。

芥氏が「人間と人間の間に媒介として言葉が力を持っていた最後の時代」と語っていたが、あながち誇張ではなく、今の日本であそこまで熱く真摯に言葉を交換する場面には出くわすことは難しいだろう。

自分が居眠りしながら授業を聞いてきた900番教室でたった50年前にこんな熱い議論が繰り広げられていたとは本当に驚き。

作品の総括として「私たちに必要なのは、熱と敬意と言葉」という言葉があったが、本当に2時間の中でそれをこれでもかというほど高密度に伝えてくれる作品だった。
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